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第16話

 一連の手続きを経てようやくテレビ局に入ると、エイジが出迎えてくれた。  今回出演する番組のプロデューサーと懇意にしているため、マネージャーとして付いてくれることになっていたのだ。 「いや~、聖ちゃんも出るって聞いたら、いてもたってもいられなくってさぁ」  にこにこと聖の前に歩み寄ると、その姿を見てますます笑顔になる。 「いいねぇいいねぇ。特におなか。セクシーだねぇ~」  完全にセクハラ上司である。 「とにかく、早く楽屋に行きましょうよ」  透はニヤニヤが止まらないエイジをせっついた。 「あぁ、もうヘアメイクの人も来てるから。俺はちょっとスタッフの人に挨拶してくるわ」  簡単に楽屋の場所を説明すると、エイジはさっさと移動を始める。  テレビ局という場所が初めてのメンバーは、おっかなびっくり後を付いていくのだった。  素早く着替えとメイクを済ませた透は、さっきからチラチラと聖の方を盗み見ていた。  秋都と彼方は彼の両脇に控え、至近距離でガン見している。おかげでヘアメイクの人は非常にやりにくそうだ。  もちろん翔と爽汰も、とっくに準備を済ませて聖の様子を見守っていた。 「はい、お疲れさまでした」  その声に、楽屋の張り詰めた空気がふっと緩んだ。と同時に、今度は感嘆のため息が漏れる。  鏡に映った聖は、現世に迷い込んだ妖精のように愛らしかった。 「やっぱり素材が良いから、あまり過度に重ねないようにしたんですけど」  少し心配そうなヘアメイク担当に、透は「全く問題ないです」と半ばうわの空で返答した。  彼の言葉通り、メイク自体はそこまで厚塗りにはされていない。  付け睫毛も派手なものではなく、アイメイクそのものは必要最低限といった感じだ。  明るいブルーのカラーコンタクトがここまで似合う人間もそういないのではないだろうか。  ピンクよりの赤といった色味のウィッグには、ところどころ白い羽根が飾ってある。 「これ、マジでテレビ出たら大変なことになるんじゃない?」 「絶対、話題になるよなぁ~」  皆が口々に感想を言い合う中、透は不安そうな表情の聖が気になっていた。  やはり、引き受けたはいいものの実際は乗り気なわけではないのだろう。 「ふじわ……じゃない、聖は、これで大丈夫?」  後ろから声をかける。わざと呼び捨てにしたのは、本人から同意を得た優越感がそうさせたものだ。  鏡越しに見つめ合うと、聖は覚悟を決めたように大きく頷いた。 「変なこと振られても、俺が絶対にフォローするから。安心して」  自身にも言い聞かせるように励ますと、純白の天使は神々しい微笑みをくれた。  その姿は、背中に羽根が生えていないのが不思議に思えるくらいだった。  この魔法が、ずっと解けないといいなと願う。  きっとこの先、二人の間には様々な難題が降りかかるだろう。    それでも、乗り越えていけると信じて。  さあ、殻を破って、新しい自分へ。

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