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番外編 sota 第2話

「で、踏ん切りをつけるためにアコギを買うわけ?」  透に問われて、大きく首を縦に振る。  あれこれ考えた結果、爽汰はまず自分に投資することにしたのだ。   「高額な楽器を買っちゃえば、もう後に引けなくなるんじゃね、と思って」 「根岸くんらしいというかなんというか……俺としては、バンドのためになることなら歓迎するけど」  そう言いながら、透は真剣な目で店頭の商品を吟味している。  もちろん、爽汰のギターを探しているわけではなく、自分が欲しいものを物色しているだけなのだが。 「いいなぁ、俺も便乗して買おうかなぁ」 「透、そんな余裕あるの?」  背後から声をかけられて振り向くと、聖が立っていた。店のロゴと、謎のキャラクターがプリントされたエプロンを付けている。 「おぉ、ひーさん。店に出てくるなんて珍しいな」  爽汰も、聖にアコースティックギターを習い始めてからは、彼のバイト先であるこの店にはよく来ていた。 「根岸くんがアコギ買うって聞いたからさ。今日は特別」  エイジに言わせると、聖が店頭に出ると本来の業務に戻れなくなるほど客が殺到するので、基本、表に出ることはないらしい。 「最初の頃にくらべたら、かなり上達したもんね」 「そう?」  褒められて顔がニヤける。 「そうだよなぁ。ホント、どこ行くにもギター持ってくし」  いま爽汰が使用しているギターは、聖から借りているものだ。どうやらヴィンテージで、買うとなると相当値の張るものらしい。 「根岸くん、予算はどのくらいなの?」  問われて、爽汰は口ごもった。それなりに貯金はしているが、果たしてどこまで投資してよいものやらわからない。 「ひーさんから借りてるやつと同じくらいのレベルだと、どのへんになるんだ?」  逆に質問されて、今度は聖が黙った。その様子から察するに、かなりの高額になるものと予想される。 「なんかイヤな予感がするから、やっぱいいや。まだヘタクソだし初心者向けでいいよ」 「う~ん……わざわざ来てもらってるのに言うことじゃないけど」  しばらく考えていた聖が、口を開く。 「なんなら、いま貸してるやつ譲ろうか、お友達価格で。あれ、もともと貰い物だし」 「マジで!?」  爽汰が顔を輝かせると、それまで黙って話を聞いていた透が口を挟んだ。 「ちょっと待て。それって、元の持ち主は松浪くんだろ? そんなの豚に真珠じゃん」 「なんだそれ、ひでぇな」  こと憧れの人が絡むと、透は途端に前が見えなくなるタイプだった。 「おれも最初はあのギターで練習してたから、ちょうどいいと思うよ」  聖は、そんな透の態度には慣れっこなので気にせず話を進めている。 「じゃあ、ご厚意に甘えさせていただこうかな」 「その代わり、今度ご飯おごってね」  にっこりと微笑まれて、無駄に心臓がドキドキしてしまう。 「おぅ、まかせとけ。牛丼でもラーメンでもハンバーガーでも」 「しょぼすぎ!」  わいわいと団欒していると、いつの間にか周囲に人が増えてきた気がする。 「聖、もう戻ったほうが良いんじゃね?」 「うん。また後でね」  仕事が終わったあとに約束をしているのだろう、ふたりは自分たちの世界に入ると、爽汰を置き去りにしたまま別れの挨拶をした。

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