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番外編 toru 第1話

 聖のまっしろな両脚が眩しくて、透はなかなか直視することが出来ずにいた。  普段から冗談っぽく「萌えすぎて死にそう」などと言っているが、今夜の彼の姿はある種、暴力的ですらあった。  大きな瞳を潤ませ、上目遣いでなにかを訴えてくる姿は、凶悪なまでに艶かしい。  きゅっと閉じられた紅いくちびるにその決意を感じ取って、透は彼の気持ちが変わらないうちに、と抱き上げた。  一見、触れたら壊れてしまいそうな白い肌は、指をすべらせると驚くほどにやわらかい。  はじめて重ねたくちびるは、この世のものとは思えないくらいに甘美な感触だった。  最初から深くくちづけることはためらわれて、貪りたい欲望を必死で抑えて顔を離す。  かすかに耳に届いた吐息があまりにも甘やかで、透は目眩を起こしそうになった。 「聖……好きだ。愛してる。もう、絶対に離さない」  他に表現する方法が見つからなくて、透は思いつく限りの愛の言葉を囁く。  だが、口に出す言葉だけでは、このあとからあとから溢れ出てくる愛しさは伝えられそうになかった。  本当なら今すぐにでも押し倒してしまいたかったが、彼を大切にしたい、と宣言した想いは変わっていない。  自分と同じシャンプーを使ったはずなのに、聖の身体は立ちのぼるような芳香を放っていた。そんな甘い香りのする髪を撫でながら、額や頬、鼻の頭にキスの雨を降らせる。  すると、聖の腕が首に絡みついてきた。  いまにも零れ落ちそうな涙を湛えた瞳が、透の視線を捉える。  次の瞬間くちびるに感じる、小悪魔の誘惑。  誘われるがままに噛みつくようなキスをし、そのまま舌を差し込んで彼の中を味わう。  そうしながら片手を聖の服の下に忍ばせると、びくんと反応を返してきた。  声が出せない、という聖のいまの状況に、透は感覚を研ぎ澄ませる。  些細な仕草でも見逃すまいと、すこしずつ敏感そうな箇所を探っていった。  背中に手を添えながら首元に舌を這わす。鎖骨に触れると過剰に反応するのを見て取って、透は執拗にそこを責めてみた。  ふるふると力なく首を振った聖の息が、だんだんと荒くなっていった。  透の頭に伸ばされた手が、もどかしそうな仕草で髪を梳く。 「ここ、弱いんだ?」  わかりきったことを敢えて問うと、可愛らしく睨まれる。  気を良くした透は、上着を脱がせにかかった。服の下から現れた素肌に、目が釘付けになる。  呆けたように眺めていると、聖のしろい指が透の服に触れた。両手で持ち上げようとする仕草が微笑ましくて、つい頬にキスなどしてしまう。  裾を掴んだ手は、他人の衣服を剥ぐことに慣れていないのかぎこちない動きをみせる。  そんなところも可愛く感じられて、その手を取って、ほっそりとした指に口付けた。そして、自ら素早く服を脱ぐ。  ぎゅ、っと抱きしめて肌を合わせると、まるで吸い付くような感覚に襲われた。  このままずっと抱き合っていたい、という欲求と、それ以上に彼を求めようとする自身の身体。  透はどうしたらいいのかわからなくなって、目の前の愛らしいくちびるを舌でなぞる。 「……っは、あ」  耳に届いた声を脳が認識した途端、たまらなくなってまた深くくちづけた。  本人は無意識に出しているのであろう聖の甘い声は、透の欲情を掻き立てるにはじゅうぶんすぎた。  もっと聴きたい、もっと彼を知りたい。  過去の痛みも、この劣情でさえも全部受け止めて、ひとつになりたい。  既に熱くなっている下半身に手を伸ばすと、せつなそうな吐息と戸惑った表情がますます透を刺激した。  快楽に耐えるように震える身体が、指を動かすたびに反応を返してくる。  煽られるようにだんだんと激しくしていくと、布越しに湿った感触が伝わってきた。  それがふたりを隔てる障壁のように感じられて、透はやや乱暴に聖の身に着けているものを取り払う。  頬を薔薇色に染め、恥ずかしそうに透の肩に顔を埋める姿。それはいままで隠していた嗜虐心まで呼び起こしてしまう。  性急に彼を求めてしまう欲望と、大切に護ってやりたいという理性の狭間で、透は揺れ動いていた。  しかし、目の前の媚態はそんな迷いを粉々に打ち砕くほど強烈で、思いとは逆に手は確実に聖を追い詰めていく。 「と……る、」  幻聴かと勘違いするほどにかすかな声で、名前を呼ばれた。  そして、今にも爆発しそうな透自身に、やわらかな聖の手が触れる。 「それ、マズイから……っ!」  きゅ、と握りしめられた途端、透は歯止めが効かなくなるのを感じた。この状況で、理性を保ってなどいられるはずもない。  お互いの昂りを擦り合わせると、あとはただ本能に従うだけだった。   「あ、っ……」  ひときわ高い声が漏れ、それを合図に、ふたりは同時に果てた。

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