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番外編 toru 第2話

 汚してしまったお互いの身体を清めようと、透は聖をバスルームに誘った。  だが、恥ずかしがって布団に潜ったきり、彼はかたくなにその場から動こうとしない。  意外と頑固な性格なのは薄々わかっていたが、こんな時まで発揮することはないのにな、と透は思い――だが、そんな意固地さすらも愛しくて、いよいよ自分も末期症状か、などと苦笑する。 「お~い、そのままじゃ気持ち悪いでしょ? 熱いシャワーで洗い流した方がいいって」  ぶんぶんと首を振っておおげさに拒否され、透の中に悪戯心が芽生えた。 「じゃあ、俺だけ行ってくるよ。聖は裸のまま寝るんだよね」  そのセリフに、目の前の塊がもぞもぞと動いた。聖は目だけを布団から出すと、じっと透をみつめる。 「服はついでに洗濯しておくから」  そこらに散らばった衣服をかき集め、透は引っ込みのつかなくなっているであろう彼に背を向けた。  ごそごそと動く気配がして、振り向くと白い物体が立っている。 「ちょ、その格好で行くつもり?」    呆れたように笑うと、すごい顔で睨みつけられた。しかし、頭から羽毛布団をかぶって顔だけ出している格好では、まるで迫力がない。 「さすがに無理あるから……」  そう言って布団を剥がそうとするが、思いのほか強い力で引っ張られる。 「もう観念して出てきなよ。だいたい、ここまでしといて恥ずかしがるとか今さ、ら」  最後まで言う前に手で口を塞がれて、透はもごもごしながらもその隙に聖を抱き寄せた。   「つかまえた」  頬にキスすると、聖は諦めたように腕の中におさまる。 「あー、でも一緒にお風呂とか絶対我慢できないよなぁ」  ぽつりとつぶやくと、困ったような顔が透を見た。 「聖は……その、ちゃんと最後まで、したい?」  こんなこと訊いたらまた殴られるかな、と透は身構えたが、意外にもなにもされなかった。  代わりに、真剣な瞳がなにかを訴えかけている。 「俺、は、もちろんお前を抱きたい気持ちはあるけど。負担になるようなことは、無理にしたくないし」  言いながらも、透は頭の片隅でそれが本心でないことは理解していた。  大事にしてあげたい想い以上に、すべてを自分のものにしてしまいたい気持ちがあるのは確かだ。  そんな彼の考えを見透かすように、聖は軽くつま先立ちをすると透の額にちゅ、とキスをくれた。  愛らしいそんな仕草にますます煽られて、透はつい、また目の前のくちびるに吸い寄せられるかのように近付いてしまう。  いまにも触れようとした瞬間、ひんやりとしたしろい指が挟まれた。  驚いてみつめると、聖の潤んだ瞳が「いまは、これ以上はダメ」と告げている。  おもわずその指を口に含んでしまい、今度は本当に頭をはたかれた。

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