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第二章:運命のプレリュード(前編)
とある男が、魔界へ、師に、導かれ、色んな圏を、瞳に、映してきたものだと云う説がある。
洗礼された者、愛欲を犯した者、暴力に物を言わせた者が堕ちる場所。
どろどろで、ぐつぐつと。
厚釜で、煮た様な、生きる者が、想像しない所まで、足を運んだのだ。
その人間が、瞳に、映し。
ー…何を、思い描いたのかは。
私には、解らない。
でも、魔族は、魅力の塊だと思っています。堕ちてはいけないと、頭では、理解していても心は正直なんだと。
ー…私も、また、魔族に。
魅了された一人なのかも知れません。
「神の曲と、書き『神曲』ですか。素晴らしく、興味深いものでした」
ー…なら、私の。
想い出も、曲を奏でてくれるでしょうか。
決して、結ばれる事すら叶わない悲愴を…。
走馬灯の如く、描き出してくれるでしょうか。
何時の日か、生まれ変わったら、前世では大層な罪を犯したもんだと笑えるでしょうね。
ー…廻る、羅針盤。
全ての運命は。
私と、貴方が、出逢った事から始まり、見えない歯車が狂い出した。
此処に、刻まれるのなら、大天使と、魔界侯爵の儚い恋愛(こい)。
運命とは、時に、残酷なのです。華やいだ世界の、裏には、血塗られた世界。
歴史と、共に、暗黒化され、表沙汰にはならないのです。
机に、置かれてあるティーカップに、入っている紅茶は、私が支えている姫が、選んでくれた茶葉から作られた。
ー…この、屋敷の庭から。
時折、運ばれてくる匂いは、香りが、柑橘類と、ハーブをブレンドした匂いが漂ってくる。
ー…それも。
姫が、業っとやっているのだと。
知ったのは、私が専属になってから、半年、経った後だった。
思い返せば、そんな時期からだったでしょうか。長い間、お側に、支えていると、記憶が、錯誤しやすい。
ー…何時からでしょうか。
血肉を、啜りあ合う、獣が、可愛いげがあると思い始めたのは。
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