17 / 41

3-2

ー天界・エデンの園 晴天な空には、雲が、浮かび。 風に、吹かれながら揺れる花々。 平穏な天界の日常だと、思うかも知れないが、さっきから、サキエルの中では、不穏な感じがしてならない。 これが、意味する物は、きっと…。 説明の付かないモノかも知れない。 『そんな困った表情をするのも、ウリエルを…下界へと、やったせいかしら?』 サキエルには、聞こえない声音が、流れた。 どうやら、エデンの園の様子を伺っているようだ。 『あまり…好ましくない事かしら。でも、サキエル、不安は、争いを呼ぶ事になるのを覚えておいて。心を…穢さないで』 まだ…。 不穏な風は、吹いていない。 ー…だとすれば。 彼の心の不安を、取り除くのは、恋人であるハニエル。 “十二月姫”。 この世に、幸せを運ぶ、七大天使で、唯一の女性。 「あら、お祈り?」 ふっと、女性の声を聞いた瞬間、彼は、振り返った。 葉っぱが、人の形を作り上げ、カッパ-ブラウン色の髪が、見えた。 「やぁ、ハニエル…」 「下界へ、ウリエルが、行ったらしいけど」 「だから…お祈りを…」 「今回は、相手が、悪いわ」 そう、相手が悪い…。 魔界帝国屈しての魔族。 魔王の右腕。 彼の噂は、彼女の耳にも入っている。 『流石、セリデュック兄様の側近なだけあり、実力は…凄いと思います。遠い昔に、置いてきた一人かしら』 ふんわりと、浮かぶ姿に…。 思わず、笑いたくなった。 ー…“ゼウダ-・エルレイ・プリゾ卿”。 魔界貴族最高峰“ティーベル”に並ぶ、実力者。 プリゾの家系は。 少し、特殊だった気がする。 『天界創造書』に、記されていた事を、彼女は、思い出した。 『開かれるは、禁断の味。神が、人を造った時に、犯した罪そのもの。甘い甘い誘惑には、罠がある』 エデンの園を覗いていた女性は、一瞬だけ、姿 を、現した。

ともだちにシェアしよう!