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ー天界・エデンの園
晴天な空には、雲が、浮かび。
風に、吹かれながら揺れる花々。
平穏な天界の日常だと、思うかも知れないが、さっきから、サキエルの中では、不穏な感じがしてならない。
これが、意味する物は、きっと…。
説明の付かないモノかも知れない。
『そんな困った表情をするのも、ウリエルを…下界へと、やったせいかしら?』
サキエルには、聞こえない声音が、流れた。
どうやら、エデンの園の様子を伺っているようだ。
『あまり…好ましくない事かしら。でも、サキエル、不安は、争いを呼ぶ事になるのを覚えておいて。心を…穢さないで』
まだ…。
不穏な風は、吹いていない。
ー…だとすれば。
彼の心の不安を、取り除くのは、恋人であるハニエル。
“十二月姫”。
この世に、幸せを運ぶ、七大天使で、唯一の女性。
「あら、お祈り?」
ふっと、女性の声を聞いた瞬間、彼は、振り返った。
葉っぱが、人の形を作り上げ、カッパ-ブラウン色の髪が、見えた。
「やぁ、ハニエル…」
「下界へ、ウリエルが、行ったらしいけど」
「だから…お祈りを…」
「今回は、相手が、悪いわ」
そう、相手が悪い…。
魔界帝国屈しての魔族。
魔王の右腕。
彼の噂は、彼女の耳にも入っている。
『流石、セリデュック兄様の側近なだけあり、実力は…凄いと思います。遠い昔に、置いてきた一人かしら』
ふんわりと、浮かぶ姿に…。
思わず、笑いたくなった。
ー…“ゼウダ-・エルレイ・プリゾ卿”。
魔界貴族最高峰“ティーベル”に並ぶ、実力者。
プリゾの家系は。
少し、特殊だった気がする。
『天界創造書』に、記されていた事を、彼女は、思い出した。
『開かれるは、禁断の味。神が、人を造った時に、犯した罪そのもの。甘い甘い誘惑には、罠がある』
エデンの園を覗いていた女性は、一瞬だけ、姿
を、現した。
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