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『ー…汝の清き魂が、闇へと穢されぬ事なかれ』 何処からともなく、柔らかなソプラノボイスが二人の耳に入った。 「今の声は…」 「…姫様ね」 「どうりで、風が温かいと思った…」 「姫様様が吹かせる風は、常に私達を温かく包んでくれるもの」 再び、優しく吹いていた風が広いエデンの園を駆け抜けていった。 「姫様、有り難う御座います…」 サキエルは感謝の言葉を言の葉に乗せ、エデンの城に居るであろう主に送った。 「それ、ウリエルから習ったの?」 「え、違うよ。これは、メタトロン直伝!」 「メタトロン直伝?」 「ああ見えて、メタトロンはロマンチストだからさ。大好きな人や親愛なる人には必ず、言の葉に乗せるんだよ。でも…彼が一度たりと、恋を成就してないのは何故だろう」 不思議な表情でハニエルは、サキエルの行動を見ていた。 てっきり、ウリエルから教えてもらったのかと思えば、あの筋肉馬鹿大天使からとは、少し気が引ける。 見た目によらず、ロマンチストなのは良いが、やり方がいけない気がする。天界に棲む女神達が一斉に引いていきそうだ。 「恋を成就する以前の問題だと思うわ。彼の場合は」 「…」 「ガブリエルがメタトロンみたく、筋肉馬鹿じゃなくって安心したわ」 幼馴染みが、前七大天使と同じ筋肉馬鹿だったら、ハニエルは完全に痛い目で見るだろう。 只でさえ、エデンの城には何十という大天使の中には、むさ苦しそうな男性が多い。かえって、安らぐのは爽快なくらい麗しいウリエルを眺めてる時。 美の女神に並ぶ美貌を兼ね備えた彼は、言うまでもなく、目の保養だと気付いた。 「僕の脳内は、想像を拒否したみたい…」 「ー…想像したら駄目よ。私は嫌よ?ガブリエルがメタトロンみたいな性質になったら、むさ苦しい男共と同じ扱いしてやるわ」 想像しなければ良かったと、後悔したサキエルは苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。 絶対にあってはいけない予感した。

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