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鳴呼、彼女ならハッキリと口にするだろう。 仁王立ちし、腕を組ながら。 『上腕筋とか、言われても困りますわ。私、筋肉には、興味がそそられませんの。頭まで、筋肉になりそうで、魘されそうです…』 背後には、虎の図が描かれるんだろうなと思いつつ、昔から疑問でならないメタトロンが自分の恋愛が成就しない理由。 誰も一切、触れたりしないのだ。何時も野次馬の如く、その場に出会すミカエルですら触れたりしないから余計、謎が多い。 「まぁ、柔軟性はありますし。容姿には何ら問題ないと思いますよ?容姿は」 容姿を強調するハニエル。 「…うん、容姿は僕も問題ないと思うんだ。中身の問題かなぁって」 「出家や出世はしても、契りを交わす事は一生無理だと思いますわ」 「何か年々、メタトロンに対しての毒舌が酷くなってるよ…」 「筋肉馬鹿だからいけないのよ。頭の中まで筋肉だから」 紅い瞳が鋭い睨みを利かす。 ハニエルが言う様に容姿は、至って問題が無い。無いから逆に神々も天使達も突っ込みにくいんだと共感する。 実際、サキエルも何処を、どう突っ込みべきなのか七大天使になる前から悩んでいた。 しかしながら、口を開けば『美しい筋肉』や『鍛え上げられた身体』などと放つ。 お陰で、彼の部下は、ある意味で残念な美形の集まり。 通りすがりの女神は、血相を変えて逃げていくパターン。一方、メタトロンが育てたガブリエルはというと、料理が趣味で婦人達の憧れの的だ。 この差が案外、冷めきっていたりする。 「…残念な美形、前七大天使」 最早、浮かぶ言葉が一つしか無いのが哀しすぎる。 ー…何故、其処で、妥協をしないのか。 嫁を貰う為に、苦労していると、聞いている。 『筋肉と、付き合える女性なら』 誰もが、聞いたら、一度は、吐く。 ー…そう、考えながら。 サキエルは、呆れた。

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