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第四章:白き雨の前奏曲
―天界・ウリエル邸・ウリエルの寝室
しとしと。
そう、例えてしまいたいくらいの、水の雫が空から落ちてくる。
ゼウダーと、初めて逢った日の雨とは大違いで、憂鬱な気分にさせられてしまう。
「雨…ですか」
寝室の窓から空を見ながら、ウリエルは独り言を呟いた。
ゼウダーに、逢うまでは、雨という天気も好きだった。だが、一辺させたのは、あの、瞬間だったと思う。
雨が…。
あの時の情景を思い出さす。
『我を思い出せるぐらい激しく、熱く、この清き軆に躾てやる。忘れるなよ、ウリエル…』
彼は、自嘲気味に笑い、ウリエルに言ったのであった。
言葉通りに激しく、熱く、抱かれ。熱い熱い白濁を注ぎ込まれた。
魔族に、抱かれる事だけは、一生ないと思っていたのに、彼は、意図も簡単に成し遂げたのだ。
存分に、辱しめ…。
乱していった。
反芻するだけでも、乱れた姿が恥ずかしくって、仕方ない、彼は、顔を染めた。
何故、忘れようとしているのに…。
浮かんでくるのか。
この、雨は、暫く…。
ー…止みそうにありませんね。
「姫、拗ねてなければ良いんですが」
何時もなら、支えている主と、庭で、ティータイムの時間なのだが。
流石に、大雨が、降っていては、大好きな薔薇を見ながら、紅茶を嗜むのは無理だ。
今日の紅茶は、香り高い紅茶の王と言われているアッサムのミルクティーあたりだろうか。
それとも、オレンジが香るオレンジペコ-だったりするのだろうか。
どちらにしろ、彼女が選ぶとすれば、ウリエルの気分に合わせてだろう。
「拗ねていたら、ティーカップから顔を出したり、クラエル様の大事な宝石に、皹が入っているぐらいでしょうか。後は、ガブリエル特製のデザートを、焼け食いしているでしょうね」
想像しただけで、おぞましい光景が浮かんでくる。
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