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「だけど、クラエティア、趣味が悪いわ。戒めに、自分の名を、付けるなんて…」
記憶の中に、眠るもう一人の自分が、鳥肌ヲ立てているのを感じた。
天界の皇女として君臨している彼女は、歯痒かった。
不穏な空気が、流れているのは解っている。が、掟に基づき、手を出せないのが、苛立ちを覚えさせた。
どうして、父様は、あんな掟を作ったのか。
「半分は…嫌がらせですわ…」
あの、腹黒男。
どの面下げて…。
長年と、温めてきた計画を実行に、移そうとしているのか。
『あ、レイナ、セリュデュックが…呼んでいたぞ…』
『…っ、そうでございますか』
『“サファリア”、私にも、本名で呼ばす事を許せば、何も、長年と、練ってきた計画に参加しない方法もあるだろう?』
『それじゃ、意味を成さないのを貴方が、一番、知っているじゃありませんか。クラエティアの落とし胤であるギリセと、クラエル。しかし、クラエルは』
何とも、おぞましい結果なのだろう。
「実の息子を使い、実験した結果が、今とは、アイツも、考えたものだわ。私は、その、計画を捻り潰したいくらい、貴方を、酷く、恨む…」
結果が、見えている彼女にとって、最終決断が、迫られているのも現実だ。
長年と、冷戦状態にある神と、魔族の闘い。
目を瞑ってきた者同士が、再び、争う日が来るとは、予想が出来ない。
ー…油に、水を注ぐ事になるとは。
誰も、思いもしないアクシデント…。
「だけど、ウリエルの春に、奇妙な噂は、ご法度ですわ…」
レイナは、短い溜め息を吐きながら、窓の外を覗いた。
晴天な空は、闘いすらも忘れさせるぐらい清々しく、自然の風が吹き込む。
エデンの園では、天使(アークエンジェル)達が、讃美歌を歌っているのだろう。
平和そのものを象徴した天界ならではの日常だ。
こんな、平凡な日々に、火の粉を撒こうとか考えている輩の行動が解らなかった。
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