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何故、こんなにも、人は、罪を犯したくなるのか。 それは、罪の味がするからだ。 嘗ての著名人達は、色んな言葉を残した。 有名なユダの福音書に、綴られているではないか。 『彼らは宣言する。裏切り者はユダがこれらのことに精通し、しかも、彼だけが他の誰も知らない真実を知り、裏切りという秘義(ひぎ)を成し遂げ、その結果、彼によって地上のものも天上のものもことごとく大混乱に投げこまれたのだ、と。彼らは、この種の話を捏造して、それを『ユダの福音書』と呼んでいる』と。 確かに、二世紀半ばには、そいゆう説があったとか。 本を読めば見えてくる異説が、広がっていく。 これは…。 異端の者に対して、唱えたものだろうか。 ー…鳴呼、天界にも。 『ユダの福音書』の如く、記された本があったな。 名前は、なんだっけ? もう、随分と、遠すぎて忘れてしまったわ。 凄く…。 大切な事を、記されていた気がする。 それは、何世紀後に、目覚めるかも知れない。 私が、知らない所で…。 忽然と、開かれるのだろう。 次の、標的者(ターゲット)を、定め。 梁を落とす。 それが、必然が生み出す罠。 白き雨が教える音律を鳴らしながら、モーツアルトの『雨だれの前奏曲』が、弾かれる。 ー…罪の味を染み込ませたケーキの如く。 演奏家が、奏でるピアノの音色は。 魅惑的に…。 堕としていく。 購えなくっても、購っていく運命に翻弄された哀れな羔と、共に。 熱く、情熱的な、恋愛が、幕を開く。 儚い恋を、味わうのは、果たして、罪なのだろうかと、問われた時。 私は、一人の神として告げるだろう。 『誰が、その罪を咎められるでしょう』。 思わず…。 自嘲しながら。 彼と、彼を、愛してしまった男に。 運命の輪を…。 潜らせてしまうでしょう。

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