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第五章:魔の熱きワルツ(ゼウダ-side)

―魔界・プリゾ邸・テラス 見慣れた景色なのに。 こんなにも、棲んでいる世界が違うのだと思い知らせる。 「ソナタが気配に気付かないとは、何か考え事か?」 我の顔を覗き込んできたシイガが、瞳を細めながら尋ねてきた。 「…我とて、考え事の一つや二つはする」 「本能のままにいくソナタにしては珍しいな。その考え事が、今後の影響を及ばさなければ問題ないが…」 「何も、影響は及ばさないさ」 もう少し遊んでやろうと考えていただけで、それ以上の、感情など芽生えるハズもない。 我は魔族で…。 ウリエルは大天使。 種族が十分に物を言う。 所詮は気まぐれだ。他の天使には無いタイプなだけで、我にしては物珍しいだけ。 「ゼウダー…」 十分に、遊んだら、飽きてしまう。 子供みたく、ポイッと、捨てるかも知れない。いや、新しい玩具を要求してしまうかも。 そんな、思考が頭を駆け巡る。 別に、シイガ言った事が、現実になる可能性は、低いだろう。 我の、性格を知っているなら、尚更。 『その、瞳には、何を映しているのですか?』 不思議そうな顔をして、問う若い女性。 我は、嫌気が指していた。 政略結婚だからといって…。 愛してもいない者を、抱くという行為が、鬱憤を、溜めさせた。 何を、映しているなんて、魔界で、行われる行為を眺める毎日だ。 部下に、命令を出し、魔王の執務に付いて行く。 それだけの事を、彼女にとっては、新鮮さを感じたのだろう。 「ソナタが、憂いってどうする。我は、自分の欲に従うだけだ」 欲には、素直なんだ。 まるで…。 ブランデーを、味わっているかの如く、優雅な気持ちにさせてくれる。 それを、少しの間が指したくらいで、揺らぐ心を持ち合わせていない。 鳴呼、アルザリに頼んで、年代物のブランデーを、開けさせるかな。 彼奴のコレクションシリーズ、中々の物で。 魔界に無い酒もあるんだよな…。 何処で、取り寄せているのか、問い詰めないといけない。

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