41 / 41
5-5
雨のメロディーが聞こえるだろうか。
これは、始まりの始まり。
開けば…。
其処は、暗闇の中に眠る者が、息を潜めて、待っている。
『それは…混沌の闇に、眠る者』
ひっそりと、息を殺しながら、まだかと。
ー…待っているのは。
既に、形が無い者。
この世に、災いをもたらす禍々しい男であり。
全ての元凶とも言える根源だろう。
華々しい世界にやって来た招かざれる者だと。
解っていたのに。
双子の弟は、快く、受け入れた。
ー…悲劇の始まりは、今、落とされた。
『“クラエティア”』
その名が、口にされた時…。
目覚めるのは。
ー…“ベルゼ”。
花、歌う世界は、綺麗過ぎて、少し、生きた心地はしないかしら。
でも…。
貴方は、目覚めるのでしょう。
軋む音を耳にしながら。
嘗て、異母弟が、実験材料として選んだ被験者。
ギリセの兄『クラエティア』を、倒すべく。
鐘を、鳴らし始める。
その音は、天界全部に広がる事でしょう。
“サファリア”が、長年と掛けてきた時間を費やし、甥である彼を、欺く為に、考えたゲーム。
それを、始めてしまえば、後には引けない。
『彼の中に巣食う蛆虫』
ー…ユリウカ。
尚も、安息の地に、闇を掛けようとしている男。
壊したくって、仕方ない愚か者。
その衝動は、段々と、潤う事なく、渇いてくる。
そう、告げる様に、嘗ての絶対神は、静かに、目を瞑った。
ー…時の中を。
生きると、決めた彼女は、運命が廻るその日まで、ひっそりと、眉唾を飲む勢いで、気を落ち着かせるのであった。
誰かが、犠牲になってしまうのは嫌だ。
しかし…。
狂い始めた歯車を、戻す事など、出来ない。
私が、彼と出逢った時…。
過去の大罪も、開かれてしまうのだろう。
誰かが気付く前に、根絶やしにする事も考えたが。
やはり…。
ベルゼ、貴方が、終止符を打つのに相応しい。
ー…幾度と。
姿、形が変わろうと、変えられない宿命に購う気にもなれない。
そんな臆病になったのかと、貴方の兄に、笑われそうね。
ともだちにシェアしよう!