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彼だって、従兄が亡くなったのは知っている。それは、七大天使の中では、禁句になっているからこそ、口にしないだけだ。 こんな姿を、彼の部下達が見たら哀れで致し方ない。その光景に、視線を向けたサリエルが小さな溜め息を吐く。 「ミカエルさん、本当に大変だったんだよ。言葉には力がある事をもっと、知るべきだと思います。特に、貴方は七大天使の長だ!軽々しい発言は周りに影響する…」 「そうよ?もう少し振る舞い方を勉強しなさい。朝方の件はどうにかラグエルが片付けてくれたからいいけど。ラグエル居なかったら今頃、ウリエルは質問攻めの嵐に見回れていたわ」 サリエルの横から顔を出し、ハニエルが正座させられているミカエルに言う。 「あぁ、今日はとんだ災難です。この事が姫の耳にでも入ったりしたら」 頭を抱え、彼は深い溜め息を吐いた。 ウリエルは、主にバレてしまったらという事を考えたらしい。 言われれば、耳に入ってしまえば、笑顔で『そう。魔界帝国のゼウダ-卿に…隙を作りすぎね、ウリエル』と、言われるだろう。あの頃の、厳しい訓練が目に浮かぶ。 途方もなく、剣術や光術の使い方を、身体に叩き込まれたものだ。 それは、ミカエルも経験しているから解っている筈。 主である姫は、鬼畜だ。優しさの一つも与えてはくれないのをサキエルは知っている。 「あぁ…」 「想像したら、恐いですね」 サリエルは、想像した様だ。 報告がいけば、タダでは済まされないのを理解している。 少なくっても、ミカエル以外の者は、あの、地獄の様なスパルタ訓練が恐怖で仕方ない。 とんだ、災難という彼の気持ちも、解ってしまう。 ガブリエルなんて、冷や汗を垂らしながら、思い出したに違いない。 確かに、恐怖の賜物だと、サキエルは心の中で、吐いた。
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