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第11話 地下室の奴隷たち~紳士クラブの正体②~※

 クローゼットルームの向こうは、洞窟のような空間になっていた。  ごつごつした岩を積み上げたような壁。打ちっぱなしのコンクリートの床。  蛍光灯はなく、部屋の四隅に、仄かな蝋燭(ろうそく)の明かりが揺れている。  円いガラステーブルが全部で5つ、赤い緞帳の下りたステージを取り囲むように半円形に置かれている。  入ってすぐ横のバーカウンターには、酒のボトルが並んでおり、黒いジレに蝶ネクタイをしめたバーテンダーがシェイカーを振っていた。  一見、洒落た洞窟バーのように思えたかもしれない。  が――よく見てみると、そこには地獄のような仕掛けが隠されていた。  まず、蝋燭はすべて、4人の少年のアナルに突き刺さっていた。  彼らは、高さ2メートルほどのT型のスタンドから伸びた鎖に両足首と両手首の枷を繋がれ、逆さに吊るされていた。  ポトポトと垂れるロウで、少年たちの腹や胸には、無数の水脹れができている。  エントランスの少年と同じく、ペニスは貞操帯で固定されており、まったく外に出ていない。  乳首に穿たれたニップルクリップは、口に嵌められたボールギャグとつながっており、その端からダラダラと絶えまなく唾液が垂れている。  彼らは、「人間蝋燭」としての任務を負わされていた。    ふらふらと「椅子」から立ち上がった客が、蝋燭のひとりに近づき、スタンドの横に置いてあった箱から電池式のバイブローターを取り出した。 「もう少しおっぱいを大きくしたほうがいいな」  ピンクローターを少年の乳首に押し当てる。 「……ッ……!! ……フッ……ゴォッッ……!」  ブブブブブブッ……! という強いモーターに乳首を潰された少年は、不自由な身をジタバタさせて悶絶する。揺れた蝋燭から、大きなロウが垂れてもう片方の乳首にヒットし、ギャグのなかで泣き叫ぶ。 「こらこら。あまり暴れると火が消えるじゃないか。そんなことしたら、蝋燭2本刺しの刑だぞ。わかってるのか?」 「……ゥッ……! ゴッ……!」  すくみあがった少年が一瞬動きを止める。  が、男にもう片方の乳首もローターで責められ、ふたたび、身を捩らせる。  さんざんいたぶった少年の乳首からローターを離した男は、 「どれどれ、少しは大きくなったかな」  クリップの挟まった少年の乳首を親指と人差し指でつまんで、ビューン、と垂直に引き伸ばした。 「…………ッ! ……!」 「うーん、もう少し刺激したほうがいいか」  箱の中からガムテープを取り出し、ピンクローターを立てて押し当て、テープで固定する。 「今夜はずっとこうしていなさい」  ガクガク蝋燭を揺らす少年を尻目に、満足した男はテーブルに戻り、「椅子」にドスッと腰を下ろした。  瞬間、「椅子」は、腹に力を入れて、小太りな男の体重を受け止める。    ――5つのテーブルに、客はそれぞれ4人。    このクラブが一度に収容できる人数は、全部で20人。さっきの客が「ワシで最後か」といったのはそのためだ。  ……紳士クラブは会員制で、客のほとんどは、経営者や政治家、宗教の教祖など、桁違いの金持ちだった。  クラブでサーブされるのは、酒と、クラッカーやチーズなどの簡単なつまみだけ。  だが、それに文句をいう客は、いない。  このクラブの目的は美食ではない。  他にはない非日常の変態プレイ――美少年奴隷を道具やモノのように扱い、好き放題いたぶり、彼らが苦しむ姿を見ながら酒を飲む。  表の世界ではけして出せない、究極のサディズムと変態性欲。  そのふたつを満たすために、やってくるのだ。  酒のグラスやつまみの皿が載ったテーブルの下にも、奴隷の少年たちがいる。  ひとつのテーブルにつき、4人。  彼らはふたりずつペアを組み、重いガラステーブルの天板を背中にのせ、バランスをとりながら、膝立ちになっていた。  向かい合った尻と尻には、双頭の巨大なアナルバイブが連結してぶっ刺さっている。  ときおり客がふざけてバイブを強くするとテーブルが揺れ、動いた少年は思いきり腹を蹴られる。 「酒がこぼれるじゃないか! しっかりしろ! このクソテーブルが!」 「あっ……! もっ、申し訳っ……ございませんッ……!」    「テーブル」の少年たちのペニスも、貞操帯で固定されている。  彼らは勤務中ずっと、排泄も食事も我慢しなければならない。  ただひたすら、テーブルの脚として、客たちの酷い責めに耐えるのだ。 「まったく。痛い目に遭わないとわからないんだな、このバカめ」  ため息をついた客は、黒服を呼び、ガラスピッチャーに入れた水を持ってこさせた。  そして、テーブルの下に潜り、少年の乳首に穿たれたクリップから銀色のチェーンでぶら下がった、計量カップほどの大きさのアルミバケツに、水を注ぐ。 「……いっ……! ぎゃぁぁぁぁッ……!」  水の重みで乳首がありえないほど引き伸ばされた少年は絶叫する。  両方のバケツになみなみ水を注ぎ終えた客は、 「うるさいぞ。これくらい我慢しろ」  と少年の腹を拳で殴る。 「……ウッ……! グッ……ウウッ……!」  タプタプとバケツの中で揺れる水。  歯を食いしばった少年は、懸命に腕を突っ張り、その拷問に堪える。  テーブルの下にいる他の少年たちも、乳首に分銅や、ザーメンの入ったバケツなどをぶら下げ、うめいていた。  彼らの乳首は、ほとんどが赤く腫れあがり、肥大化してしまっている。 「ウェルカムボード兼人間花器」 「蝋燭スタンド」 「人間テーブル」 「人間椅子」    奴隷の役割は、人気順に決まる。客は帰るとき、どの奴隷が気に入ったか、黒服に伝える。  その結果は月に一回、発表される。  額に描かれた数字は、投票の順位を示しており、小さい数字ほど、過酷な任務を割り当てられることになっていた。    最下層は、「1」から「5」。  その次は、「6」から「9」の「蝋燭スタンド」。 「10」が、「ウェルカムボード兼人間花器」。 「11」から「30」は「テーブル」。 「31」から「50」は「椅子」。  そして、最下層の「1」から「5」の役割、それは―――― 「……ィッッ……! ギィィィィッ……!!!」  断末魔のような悲鳴が、天井からぶら下がった丸太のようなものから響き渡る。  丸太かと思ったそれは、両手首を後ろ手に縛られ、両足首をまとめて縄で括られ天井のフックから逆さに吊るされた裸の少年だった。  各テーブルの横にひとりずつ、設置された少年たちの役割――それは、「人間灰皿」だった。   「灰皿」役の少年たちの体は、足の裏から耳朶まで、火膨れで黒ずんでいた。  焼け焦げたソーセージのようになったペニスに、タバコの吸い殻を押しつけられ、絶叫する。  が、客はその姿に目もくれない。  彼らの尻の穴には、アナルプラグが突っ込まれており、尿道には漏らさぬよう太めのブジーが入り、テープで固定されている。  他の奴隷と違い、「灰皿」になると、ただ、モノとしか扱ってもらえない。話しかけられることもなく、ときどき、気まぐれに客のタバコの火を押し当てられ、吸い殻を口や耳の中にねじ込まれる――それだけだ。    そのため、「灰皿」になった少年たちの多くは精神を病み、長くもたない。  欠番が出ると、次は「蝋燭スタンド」の少年たちがその役目に降格する。    それゆえ、少年たちは死ぬもの狂いで客に媚を売り、点数を稼ごうとするのだ。  

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