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第27話 出張レイプ①※

   年末のショーのあと、椿は高熱を出して寝込んだ。  一週間ほど意識が朦朧として、ほとんど記憶がなかった。  三が日が過ぎたころ――椿のもとに、意外な客がやってきた。  椿の売春相手だったヤクザの須長を殺した丹下組の若頭補佐、橘 銀一郎(たちばな ぎんいちろう)――通称、(ぎん)だった。  舎弟を連れず、ひとりでやってきた銀は、部屋で寝ていた椿のベッドの傍らに立った。  サングラス越しに光る、エメラルドグリーンの魅惑的な瞳。  シルバーグレーのツーブロックの短髪。  洒落たグレーのダブルのスーツ。  口もとにタバコをくわえ、 「……だいぶ酷いことをされたみたいだな」  という。 「まだカラダは痛むのか?」  ベッドの上に起き上がった椿は、うつろな瞳で銀を見上げた。  いまさら――なんでこんなことを聞くのだろうと思った。  須長が殺されたとき、銀は椿をも殺そうとした。  椿を性奴隷として調教させ、このクラブに売りとばしたのも銀だ。  自分の運命の歯車をすべて狂わせた――この男。    もしもあのとき、この男が、自分を殺してさえいれば…………  何もいわない椿に、「ふん……」と鼻を鳴らした銀は、 「……明日、また来る。久しぶりに外に出してやるから、楽しみにしてろよ」  とだけいい残し、部屋を出ていった。  それを見ていた同室のミキが、 「……ちょっ……ちょっとっ……つーちゃんっ……!」  隣のベッドから、 「だ、だれ? いまの?」  ウサギみたいに跳ねて、やってくる。  ――「ザーメン搾り隊」の一番人気ミキは、椿のことを「つーちゃん」と呼ぶ、人懐っこいギャルのような性格だった。 「サングラスしててもイケメンがダダ漏れてたよね? ……もしかして、つーちゃんの恋人?」 「……ちがう――」 「うっそぉ? ちがうのぉ~? もったいない! ミキならぜったい、ユーワクしちゃうなぁ。あの人すっごく――おチンポおっきそうじゃない」 「…………」 「ミキはねぇ、イケメンも好きだけど、熊みたいなもっさいタイプもわりといけるんだ。イケメンってすぐ浮気するじゃない? その点モサッとしたタイプはわりと一途だし――でもね、どっちにしても粗チンはダメ。入ってるか入ってないか、わかんないんだもん。  ……ミキの彼も、すっごくおチンポおっきかったんだぁ♡ 愛してるよ、って毎日エッチしてくれて――……借金してヤクザにつかまっちゃったけど――全部返せたら、ミキのこと――かならず迎えに来るっていってくれたから……」    ……ちがう。  ミキの男は、借金のカタにミキを売ったのだ。  だけどミキは、借金がチャラになれば、ここから出られると信じている。  男がミキの給料を担保にさらにギャンブルを繰り返しているとも知らず―――― 「ね、つーちゃんの元彼はどんな人?」 「……えっ……?」 「いたんでしょ? カレシ。そんなに可愛いんだもん、モテないわけないよ~やっぱり年上?」 「……そんな――」  椿は、体育座りした膝のあいだに顔をうずめ、 「そんな――経験……したこと……ない」  とつぶやく。 「ええっ? ウソぉ? ……未経験でここに来たの?」 「未経験っていうか……セ――セックスは何回もさせられたけど――誰かと付き合ったりしたことは……ない」 「ほんとに?」 「……うん」  うなずいた椿を、ベッドに腰かけたミキはじっと見つめ、 「つーちゃん。だったら、恋、しなよ」  真剣な表情でいった。  「あんなモブじじぃたちの相手で若さをムダにしちゃだめだよ。……いつかここを出たら、ぜったいステキな相手を見つけて」 「そんな――」 「できるよ。つーちゃん、すごい美人さんだもん。……あ、さっきの男の人なんてどう? 恋人になったら特別にここから出してくれるかもよ」 「そんな――ムリだよ……」 「なんでよぉ?」 「だって……」  ――銀はきっと、自分のことをたんなる商売道具としか思っていない。 「ミキはね、ぜったいここを出て、カレシのところに行くんだぁ。そのためにいまはがんばって働いてお金貯めるの」  自分のベッドに戻り、鏡台に置いてあった化粧水をパシャパシャッと顔に塗る。 「最近すごく乾燥してるよねぇ~。ちゃんとケアしないとお肌が荒れちゃう」  手鏡をのぞきこみ、顎の下で切りそろえた艶のある黒髪を櫛でとかす。  男の()――というのだろうか。  ミキは、おしゃれや化粧が大好きな少年だった。  まだけだるさの残る椿は、ベッドに横になり、黒いシミのある天井を見上げた。    ――恋。    思春期のあいだ、叔父や従弟たちに嬲りものにされ続けてきた椿は、まともな青春を知らなかった。  学校で、背の高い同級生に胸をときめかせたり、体育のときの更衣室のにおいにドキドキしたりしたことはあったけれど、家に帰れば、家畜のような生活が待っていた。  痛みが快感になるまで調教され――高校生になると、売春まで強いられるようになった。  そんな自分が、恋なんてできるわけない。  たぶんこの先もずっと――――           ※    翌日。  銀の舎弟ふたりが、椿を迎えに来た。  その男たちの顔を見たとたん、椿は戦慄した。  丹下組のアジトの雑居ビルにいたとき、椿の性奴隷調教を担当した男たちだった。 「久しぶりだな」  黒のケーブルニットのタートルセーターに、デニムのスリムジーンズに着替えた椿の全身を舐めるように見回し、 「……だいぶ色っぽくなったなぁ」  と笑う。  その視線のいやらしさに、椿はぞくっとする。  ――外に出るのは、2か月ぶりだった。  都会のビルの上空を覆う、どんよりした黒い雲。  冷たい北風が、椿の頬をすり抜ける。 (……寒い……)  晴れ着姿で破魔矢を持つカップルや、ダウンコートを着込んだ若者たち。  自分とはかけ離れた日常を過ごす人々をぼんやり眺めていると、黒塗りのベンツが横に停まった。 「――何をしている。早く乗れ」  助手席のスモークガラスの窓が開き、銀が顔を見せる。 「あ……」  舎弟たちが、椿の腕をとり後部座席に押し込んだところで車は発車した。    椿を真ん中にし、その両脇にぴったりと張りついた男たちは、 「……おまぇ、ナンバー1の売れっ子になったんだって?」  世間話でもするかのように聞いてくる。 「スカトロとか、かなりえげつないことさせられてるらしいな。人前でうんこ出すとか、どんな気分だよ?」 「…………」  椿は、きゅっと唇をかみしめ、下を向く。 「……なんだよ、だんまりかよ」 「気に入らねぇな」 「だったら――カラダに聞いてやろうぜ」  男たちは、手を伸ばし、セーターの上から、椿の乳首をいきなりつまみあげる。 「……アッ……!」 「ほらほらっ。おまえの大好きなおっぱいグリグリだぞ」 「相変わらず乳首も感じるんだな」 「ふっ……うぅっ――ンッ……!」  布ごしに、敏感な蕾を弄ばれる。 「おっ、勃ってきた、勃ってきたっ」  男たちは笑いながら、椿の性感帯をしごき続ける。 (やっ…………)  ――視界の隅に映る、銀の、スラリとした背中。  見られているのかもしれないと思うと、よけい恥ずかしくなる。  そんな椿の思いに拍車をかけるように、 「――店に着くまで、こいつ、ちょっと思い知らせてやっていいっスか?」  舎弟のひとりが、銀に確認する。   「……好きにしろ」  タバコの煙をくゆらせながら、銀は答える。  やっぱり――椿は思った。  銀は、自分のことなど、なんとも思ってないのだ。 「へへっ。いいってよ」  ごきげんになった男たちが、セーターの上から、乳首をピンッ、ピンッ、とはじき、 「このまま乳首イキできるか、試してみるか?」  と提案する。 「いいな。その前に、チンポ――どうなってるか見てみようぜ」  男たちは、椿の足首に脚をかけ、左右に大きく押しひろげる。  ジーンズのジッパーを下げ、膝までデニムをずり下げたとたん、なかから現れた、黒いレースの女性用のTバックに、 「うわっ、エロッ! こんなん穿いてたのかよ」  と目を剥く。 「もしかして上も……」  タートルネックセーターをたくし上げた男は、パンツとお揃いのレース柄の黒いブラジャーを着けた椿に、 「……まじか」  ごくりと息を呑む。  ショー奴隷と「ザーメン搾り隊」奴隷の下着は、女性用と決められていた。  自分たちはオスではないと普段から自覚させるためだ。 「うぉー、すっげぇ興奮してきた……」 「おれも……」  男たちは、椿のパンティをぐいっと引き下ろす。 「……うっ……! ううっ――んっ……!」  ぷるんっ、と面積の狭いパンツからはみ出した勃起チンポ。 「うわっ、すっげーガマン汁ヌルヌル」 「乳首責めだけでこんなになるのか。マジ、ヘンタイだな。もう、てめぇで服持ってろ、このドスケベ」    たくしあげたセーターの裾を椿に持たせ、ずり下げたブラジャーをピンッと伸ばし、乳首をコリコリ擦る。 「あっ! あぁっ……ンッ!」 「へへっ、ブラジャーでこすられて気持ちいいだろ?」 「おっ! いっ……ヒッ! イッ……!」  チンポがぶるんぶるん揺れる。 「これ、マジで乳首イキするんじゃね?」 「もうちょっと責めてみるか」  ひとりがブラジャーで乳首をこすり、もうひとりが引き伸ばした乳首を、グイグイひねり潰す。 「おっ……ほっ! おっ! おんっ……♡」 「おーお、すげぇトロ顔」 「乳首の感度、上がってるな。……ていうか、このまま射精()させたらシートが汚れるぜ」 「そこのボックスにビニール袋が入ってただろ。そんなかに出させようぜ」  アームレストのボックスから取り出した透明なビニール袋をチンポにかぶせ、持ち手で根もとを縛る。  空気が入って膨張したビニールの中で、びくん! びくん! と揺れ動く肉棒。 「粗チンだから全部入ってよかったなぁ~」 「ま、タマは出ちまったけどな」  精液のせり上がってきたタマ袋をモミモミされ、「……うっ……!」とのけぞる。  セーターをつかむ手が、ブルブルとふるえる。 「そんなに胸突き出して、もっといじってほしいのか?」  両方の乳首をつかんで、びろーん、と引き伸ばされる。 「……ふっ……! おっ……ほぉっ……ンッ♡」  執拗に乳首だけをいじり続けられ、淫らな喘ぎ声がとまらない。 「こいつ、ますますエロくなったなぁ」 「乳首が一回りはデカくなってるぞ。相当アコギなことされてんな」  乳首を高速ピストンされ、「うっ! あっ! あぅっ!」と涙目で舌を出す。    そのとき、助手席から、 「――そろそろ着くぞ。とっととすませろ」  という声がした。  ――銀だった。    そのことばにはっと我に返った椿は、顔を上げ、ルームミラーを見た。  美しいエメラルドグリーンの瞳と目が合い、「あっ……」と耳朶まで真っ赤になる。 (こんな――こんな姿を見られるなんて……) 「……いっ…いや――……」 「ん? 何がいやだって?」  けんめいに首を振る椿に、 「乳首責めがイヤなのか?」 「んなわけないだろう。チンポもギンギンだぜ」  曇ったビニール袋のなかに、ポタポタとスケベ汁が落ちる。 「そろそろ着くってよ。んじゃ、とっととイこうな、ドマゾヘンタイ奴隷の椿ちゃぁん」 「可愛い乳首、ナメナメしてやるからなぁ♡」 「うっ! いっ……! ヤァッ……!」  男たちは、椿のセーターをたくしあげ、両手をバンザイさせる。  ふたつの乳首を舐められ、チューチューと吸い上げられ、先端を(かじ)られ、「……ンッ!」と鼻にかかった声が出る。 「いっ……やっ……!」  ――抗いきれない快楽の波に呑まれた椿は、 「……ウッ! イッ、いくっ……イッ……ちゃッ……!」  チンポに括りつけられたビニール袋の中に、ドピュッとザーメンを放った。  一週間近く、出していなかったせいだろうか。  どろりとした粘度のある精液が、袋の中で跳ね、垂れ下がったビニールにピチャピチャと溜まる。 「おー、すげー出たな。だいぶオナ禁させられてたのか?」 「よかったなぁ、ザーメンドビュドビュできて」 「……ウッ! くっ……うっ……うっ……」  外したビニール袋の口を縛り、フック替わりにしたチンポの先にぶら下げられる。 「ははっ、情けねー格好! ザーメン袋ぶらさげておつかいか~?」  男たちはゲラゲラ笑う。 (あっ……)  いや――心のなかで椿は叫ぶ。  こんな格好まで見られてしまうなんて…… 「傑作だな。写真、撮っておこうぜ」  半萎えになったチンポからザーメンの入ったビニール袋をぶら下げた椿を、男たちはパシャパシャとスマホで撮影する。  ――車は、丹下組の幹部たちが待つ、神楽坂の料亭へと入っていった。            

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