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第4話

 酔った振りをして、男性のアパートに転がり込んだ羽小敏は、玄関に入るなり、男性の首に両腕を回し、いきなりディープキスを求めた。 「ン…。ん、んっ…っう…ん」  あまりに早急で積極的な美青年に、男性は戸惑いながらも拒めない。 「ねえ…、ボクじゃ…ダメ?」  小敏は、これまでの経験で身に付けた全てを使って男性を誘惑する。  潤んだ瞳で、ギュッと顎を引いた上目遣いで見つめると、男なら誰でも、もう小敏から目を離せなくなる。先ほどのキスで濡れた唇を薄く開いて物欲しそうにすると、目の前の男性も生唾を呑み込んだ。 「欲しい…の…」  切ない声で、吐息を漏らすように囁くと、男性の方から小敏の細い腰を引き寄せた。 (落ちた…)  男性の背中に腕を回し、しっかりと抱き合うと、顔が見えないのを分かっていて小敏はニヤリと笑った。  男性の部屋は、ワンルームで、玄関からすぐのところにキッチンがある。そこを抜けると、中国では珍しくない作り付けの家具が並んだ、リビング兼寝室。そして振り返る形でバスルームに通じるドアがあった。  男性は、小敏を抱きかかえたまま真っ直ぐベッドに向かい、そのまま押し倒した。 貪るように唇を奪い、慌ただしく小敏の衣類の下に手を差し入れる。 「ぁ…、う…、ん…」  男性の手が思いの外に暖かくて、小敏は触れられるのが嬉しかった。  小敏の反応をどう思ったのか、男性はハッと手を止め、伸し掛かった体を少し離した。 「ゴメン、イヤだった?」  その不安そうな目に、小敏は吸い寄せられた。  どこの誰とも分からない青年に、誘われただけの行為なのに、この日本人男性は小敏の心と体を労わろうとしてくれていた。 (イイ人、なんだなあ)  そう思うと、小敏は胸の奥から突き上げるようなものを感じ、男性の隙を見て体を起こし、自分から服を脱ぎ始めた。 「き、君…」  戸惑いながらも、若く、美しい小敏の素肌から男性は目を離せない。白く、滑らかな肌。薄く付いた筋肉は青年と言うよりも、少年のような儚げなラインだ。だが、それは誘惑的で、男性から与えられるはずの快感を待っているのがハッキリと分かる。 「シャオミン、だよ」  上半身を脱いだ小敏は、そう言って、今度は男性のネクタイとワイシャツに手を掛けた。ジャケットは、彼自身がすでに脱ぎ捨てている。 「シャオミン?」 「うん。ボクの名前。カワイイ?」  小首を傾げ、男性を覗き込むように小敏が言うと、いかにも甘え上手な仕草で、男性もドキドキする。 「お、俺は…ゆうき」  律儀に名前を告げ、身を起こすと、「ゆうき」はベッドの上に座り込んだ。 「ゆうきさん?」  ちょんと座った「ゆうき」に、小敏は不思議そうに声を掛けた。その気が無くなったというのだろうか、何か気分を害することをしただろうか、と、小敏も心配になった。

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