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第5話

「じゃあ、『ゆうき』さん、シャオミンです。よろしくお願いします」  小敏は、「ゆうき」の警戒心を解くよう、無邪気に見えるカワイイ笑みを浮かべ、ベッドの上でぺこりと頭を下げた。その輝くような笑顔が、「ゆうき」には眩しい。 「では、続きを…」  そう言って小敏が伸ばした手から、「ゆうき」はソッと身を引いた。 (え?ここまで来て、ナシだと?)  腹が立つというよりも、納得がいかずに、小敏は不思議そうに「ゆうき」を見た。その目が、小動物のようにあどけなく、それでいて誘惑的だと「ゆうき」は魅了された。 「いや、あの…」  「シャオミン」の、いちいち男心をくすぐるような仕草に、「ゆうき」はドギマギする。これまでに、こんなに好みのタイプの子に迫られたことがなかったからだ。 「ボクじゃ…ダメですか?その気にならない?」 「そ、そんなことは…」  心細げに訊ねる「シャオミン」に、「ゆうき」もソノ気が無いわけではない。 「ボクの、どこが気に入らないですか?」 「気に入らないっていうか…その…。俺は…しがないサラリーマンで、給料も大したこと無いし、…つまり、充分なお金を出せる余裕が…」 「?」  しどろもどろな「ゆうき」の言っている意味が分からず、答えを求めて、小敏はジッと「ゆうき」を見詰める。 「つまり、その…。君って、髪、湿ってるし、体も…お風呂上りだよね」  他の男に抱かれた直後なのが気に入らないのか、と小敏は内心ムッとした。だが、今さら動揺などしない。 「ボク、友達のところに泊まるはずだったんだけど、友達とケンカして出て来ちゃったんだ。だからシャワーを浴びて…」  と、いつものように適当なことを言っていた小敏だったが、困った様子の「ゆうき」に、やっとその懸念していることを察した。 「『ゆうき』さん…、もしかして、ボクが、…売春していると思って…、る?…」  さすがの小敏も、これにはショックを受ける。  確かに、今は手当たり次第に誰とでも寝るような行為は繰り返しているが、決して金銭など受け取ったことはない小敏だった。  結局、「ゆうき」は、小敏との売春行為に払う金が無いと気にしているらしい。 「ち、違うんだ!き、君のようにカワイイ子が、そんな、こんな簡単に俺と…だなんて、そんな…。だから…」  愕然とした小敏だったが、周囲から尊敬を集める羽将軍家の一人息子として、このような侮蔑を受けるわけにはいかなかった。 「自分で言うのも変だけど、ボク、ちゃんとした家の子だから!売春とかそんなことしない。好きな人としか、こんなことしない!」  これまで、言われたことも、自分で感じたことも無かった疑いを掛けられ、小敏は必要以上に激しく動揺してしまった。

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