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第20話
「…ん…、ふ…っ…」
ねっとりとした、甘く深いキスを繰り返し、小敏 はまるで「優木 」という夕食を楽しむように味わっていた。
恋人の要求通りに、なんとか定時で退社しようと思っていた優木だが、やはり週末のバタバタのせいで18時の定時退社の予定が19時を少し過ぎてしまった。
それから急いで職場に一番近い牛丼屋に駆け込み、牛丼大盛りを2つ買うと、小敏のアパートまでタクシーを飛ばした。
そこまでしても小敏のご機嫌は取り戻せないと、半ば諦めていた優木だったが、とにかく大慌てで小敏から貰った合鍵でアパートのコンシェルジュの前を通過した。そこから連絡が入ったのだろう、玄関を開けるとすでに小敏はそこで待っていた。
「ゴメン、遅くなって…」
しかし、小敏は拗ねた様子も見せず、何も言わずに優木に抱き付くと、そのまま体を摺り寄せ、唇を奪い、巧みな誘導でリビングのソファに優木を押し倒した。
それからずっと、優木は小敏の為すがままに、ネクタイを奪われ、ジャケットを放り投げられ(ああ、皺になる…と絶望的な優木の表情など、当然に小敏は無視だ)、好きなように触れられながら、ひたすら小敏のキスに身を任せている。
ようやく気が済んだのか、小敏が唇を離し、上体を起こした。
それを見た優木は、やっと許してもらえるのかと、恐る恐る声を掛けた。
「なあ、シャオミン?」
「ん?」
「牛丼、冷めるぞ?」
優木は、せっかく買って来た、日本の有名企業の牛丼が無視されていることを懸念しているのだが、注文したはずの小敏は無視して、自分の欲望だけに夢中だ。まだまだ続きがあると言いたそうに、小敏は自分のパーカーとTシャツを脱ぎ始めた。
「心配しないで。ウチには電子レンジがある」
「いや、そういうことじゃなくて…」
休みの前の夜ということで、確かに「頑張る」と安請け合いした優木ではあるが、小敏のアパートに定時より少し遅れて帰るなり、有無を言わせぬ強引さで求められ、この先が不安になる。こんなに早い時間から頑張られては、今夜の優木の体力もそう長く持たないだろう…。
「ほら~、明日は休みなんだから、時間はたっぷりあるんだし、そんなにがっつかなくても…」
なんとか逃げ出そうとする優木に、ムッと睨みつけた小敏は不機嫌を隠さない。
「何言ってるのさ!ボクにとって優木さんは、どれだけセックスしても足りないくらい大好きな存在なんだよ!時間だって、いくらあっても足りないよ!」
プリプリ怒りながら、それでも小敏は体を離し、渋々脱いだTシャツを拾い上げ、着直した。
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