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第23話

 再び温め直したせいで、ボソボソになった牛丼に、青島(チンタオ)ビールの缶、それと優木(ゆうき)が大切にしているぬか床で漬けた大根を並べて、優木と小敏(しょうびん)は、ダイニングで楽しい夕食を済ませた。 「優木さんのぬか漬けは相変わらず美味しいな」  少し気を取り直した小敏は、機嫌よく牛丼を食べ、ポリポリと音を立てながら、愛する人の手製の漬物を味わっていた。  それを見守りながら、買い置きの駄菓子の中から、日本製の袋入りポテトチップスを陶器のサラダボウルに入れ替え、優木は小敏の前に差し出した。 「ありがとう」  こんな風に、食欲旺盛な育ち盛りの子供のような、小敏の無邪気な笑顔に、優木は癒される。  童顔で愛らしく、端整で妖艶な見た目の美しさに惹かれたのは確かだ。けれど、今では素直で、一途で、聡明な内面を優木は愛しいと思っている。 「シャオミン…」 「ん?なあに?」  牛丼の大盛りを食べた後に、なんの躊躇も無くポテトチップスを頬張る小敏の若さが、優木には少し羨ましい。そんな小敏を横目で見ながら、優木は簡単に洗い物を済ませ、冷蔵庫からさらに缶ビールを2人分取り出した。  プルトップを開け、小敏の前に缶を置き、優木自身は缶1つを持ってリビングのソファに移動し、テレビを点けた。  中国語はなかなか上達しない優木だが、それでも字幕の出る中国国内のバラエティは、そこそこ楽しめるようになった。  ゴクゴクと喉を鳴らしてビールを飲んでいる恋人を見つめ、ポテチの入ったサラダボウルを抱え、缶ビールを持った小敏が、優木の隣に座り込んだ。  ローテーブルにサラダボウルを置き、ビールを飲みながら、小敏はソッと優木の肩に頭を乗せて甘えた。  けれど、反応のない優木が気になって、小敏は体を起こして優木の顔と、夢中になって観ているテレビ番組とを見比べた。 「あぁ~っ!」  優木が食い入るように観る画面に、小敏は怒りだした。 「もう!優木さんってば、まだこんなアイドルが好きだっていうの!」 「え?あ、いや、好きっていうか…、ほら…」  テレビで歌う美青年たちに勝るとも劣らない、キレイで、カワイイ見た目に加え、とてつもなく生々しい妖艶さのある恋人に叱られて、優木は慌てる。目の前にこれほどの理想の美青年が居ながら、ついつい長年の習慣で、アイドルグループがテレビに出ていると目を奪われてしまう、業の深い優木である。 「ボクが居るのに!」  ムッとした態度を隠さず、優木の缶ビールを乱暴に取り上げ、自分の分と合わせてローテーブル置いた。 「あ、あのね、シャオミン…、絶対に彼らより君の方がカワイイし、大好きだし…」  優木のしどろもどろの言い訳も耳に入らないのか、小敏は不機嫌なまま、優木の膝の上に乗り上げ、ブツブツ言っている優木の頭を抱えるようにして唇を塞いだ。

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