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第25話
先にバスルームを出て、パジャマに着替えた優木 は、小敏 の好きな日本の黒糖梅酒のお湯割りを作って、寝室に戻った。
ちょうどバスルームから出てきた小敏は、ミントグリーンのバスローブ一枚で、優木と目が合うと、少し恥ずかしそうに笑った。
「ほら、おいで」
いつもダブルベッドの右側で寝る小敏のために、そちら側のサイドテーブルに梅酒の入ったカップを1つ置いた。
そして、自分のカップを持ってベッドを回り、優木はベッドの左側に座った。
ほんの少し引きつった笑顔で、小敏はそのままベッドに入り、両手でカップを持った。
「ありがとう、優木さん」
優木はそれに、ただ笑顔で応えた。
「美味しい…」
温かい飲み物を一口飲んで、小敏はホッとして、やっと自然な笑顔になった。少し緊張が解けたように見えた小敏に、優木も微笑んだ。
優木は自分も梅酒のお湯割りを飲んで、カップを置き、小敏に寄り添った。
「どう?話す気になったかい?」
「…正直に話すけど、引くかもよ」
皮肉な薄笑いをしながら小敏が言うと、優木はいつもと変わらない人の良い、穏やかな顔で、小敏の額に軽くキスをした。
「この歳になると、そうそう引かないよ」
大らかな態度で優木がそう言うと、小敏は嬉しそうにして、すぐに物憂げな表情になった。
「これだけは…約束して欲しいんだ」
「小敏の言うことなら、なんなりと」
冗談めかして言う優木は、自分を励まそうとしているのだと小敏は知っていた。
「父が上海に居る5日間。ボクとは連絡を取らないでくれる?」
「え?」
「父はボクを溺愛していて…。ボクに同性の恋人がいるなんて分かったら、きっと優木さんの命が危ない」
冗談だと思って、カラカラと笑い飛ばそうとした優木だったが、小敏の沈痛な表情に、これが本気だと気付いた。
「え…っと…。マジか?」
「うん」
さすがに、平和ボケの日本人には想像も及ばない中国人民解放軍の上層部である。
「あと、会えない間、絶対に浮気しちゃダメだからね!」
急にその気になったのか、小敏は早口にそれだけ言って、優木の上に伸し掛かり、唇を重ねた。
「優木さん…。ボクには優木さんだけなんだ…。誰よりも、何よりも愛してるんだ。絶対に、ボクを裏切らないでよ」
切実な小敏の言葉に、同じく小敏しかいない優木は会えない日々を思い、ペース配分も忘れて、激しく若い恋人を求めた。
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