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第46話
日曜の朝、優木 は久しぶりに1人で目覚めた。
1人で迎える朝が、これほどに静かで、寂しいものだとは優木はずっと忘れていた。
しばらくはベッドの上でボンヤリしていたが、不意に優木は孤独を感じて、自分のスマホを取り出し、待ち受け画面の恋人の笑顔に癒された。
少年のように白く滑らかな肌に、少しはにかむような素直な笑み、それでいて、こちらを舐め上げるように見る目は妖艶で、物欲しげだ。
(シャオミンに会いたい…)
会うだけでは足りないだろう。
顔を見て、肌に触れ、匂いを感じ、体温を感じ…、それらの情報から、彼への愛しさが溢れてくる。きっとそれは小敏も同じはずだ。
火曜日になれば会える。
顔を見た瞬間に、優木は小敏 を抱き寄せてしまう。いや、小敏の方から先に優木の胸へと飛び込んでくるかもしれない。
(シャオミンを抱きたい…)
堪らなく切なくなって、優木はノロノロと起き上がり、バスルームに向かった。
***
朝食を済ませ、火曜日に小敏を迎えるために、優木は買い出しに出掛けることにした。
(夕食は、和食がいいって言ってたしな。煮魚とか、すき焼きなんかどうかな)
ひたすらカワイイ恋人を喜ばせることだけを考えながら、優木は地下鉄に乗るためにアパートを出て、1人歩いていた。
たまたま人けのない通りに差し掛かった時だった。
(ん?)
珍しいことに、黒塗りの高級車が通りの向こうからやって来るのが見えた。
(あれ?ここって一方通行じゃなかったか?)
思わず優木は足を止めた。
車は真っ直ぐ優木に近付いてくる。隣を通り過ぎると思った、その瞬間だった。
「わっ!…え?、お、おいっ!」
隣に横付けされた車のドアが開き、あっと言う間に車内に引きずり込まれ、頭から布を被され、何かツンとする匂いがする、と思った瞬間には、優木は意識を失っていた。
***
「ここは?」
どれほどの時間が経ったのか分からない。
優木が目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋だった。
「え?コレって…」
優木は、生まれて初めて後ろ手に手錠を掛けられている自分に気付いた。
「え?え?」
情況が全く把握できずに、優木はドキドキしながら慌てて周囲を見回した。
「だ、誰ですか、あなたたちは!こ、ここはどこです?」
優木は、自分を取り囲む屈強な男たちに怯えながら、必死で大きな声を出した。
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