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第7話
それから、学校が体育文化祭の準備で騒がしくなってきた頃。
一度涼しくなったと思った気候は、また夏の元気を取り戻したようだった。
湿気が大分なくなって、幾分過ごしやすいとは言え、いつまでも衣替えしない制服に、悠の精神的ダメージは大きかった。
「木全く~ん」
しかも毎日毎日、登下校から休憩時間まで、隙さえあればやってくるまりんは、文化祭の準備の時間ももれなくやってくる。
自分のクラスの準備はいいのか、と問いたいけれど、何の因果か悠たちと同じチームになっていた。
まりんは教室を見回して、清盛がいないここを知ると、つかつかと入ってきて彼の席に座る。
言っておくが、今の時間は教室の半分を使って、屋台のセットを作っているところだ。
文化祭といえば食べ物屋を思い浮かべるが、教室で火の使用を許可してくれる学校はそうない。
悠たちもお好み焼き屋をやりたかったのだが、家庭科室は家庭科部と茶華道部が陣取っていたので諦めざるをえなかった。
そんな、周りが忙しく働いているにも関わらず、椅子に座ってその様子を眺めているだけのまりんに、少しイライラする。
気にしないことだ、と集中して作業に取り掛かると、頭上で声がした。
「下手な字」
顔を上げると、まりんの視線とぶつかった。ひょっとして自分に向けて言っているのだろうか、と思うが、まともに相手をするつもりはないので作業を続ける。
「字が下手な人って、人格も曲がってそうよね」
今度は悠の近くの席まできてそう言った。
やはり自分に向けて言っているらしい。
しかし、何故こんなに敵意むきだしで絡んでくるのか、さっぱり分からなかった。
「キヨならしばらく戻ってこないよ。ダンボール調達に行ったから」
黙々と作業を続ける悠の態度に、まりんはさらに態度を悪化させる。
机の上にあった作業道具を払って落とし、机を片手でバンッと叩く。
その音にクラスメイトも何事か、と視線を向けてくる。
「私、アンタのこと嫌いだから」
そんな捨て台詞を吐いて、まりんは教室から出て行った。
(何なんだ……)
こういう風にひとりで勝手に怒ってぶつかってくるのも、女が苦手な理由の一つだ。
以前、友達の口を借りて告白してきた子がいたが、それならどうして本人が言いにこないのだ、とあしらったら、その子を中心とした取り巻きから非難を浴びた。
もっともなことを言ったはずなのに、群れで絡んでくる奴らはしつこかった。
席を立って、ぶちまけられた道具を拾っていると、清盛が帰ってくる。
「進んでるか? あれ、悠どうした? えらく不機嫌な顔して」
「えぇっ? 春名、不機嫌なのか? いつもと変わんねぇじゃん」
手伝いで付いていった藤本も帰ってきた。
「………………手が滑ったんだ」
大きなため息と一緒に、イライラも吐き出してしまいたかった。
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