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そして:マゾ奴隷のしつけ方3
鏡ごしに彼氏を見る。
どこにでもいる見た目だと思っていたのはもう過去のこと。
座り込んでいるオレを眺めている彼氏はドSにしか見えない。
ただ本人はその自覚はなさそうだ。
オレをいじめているのが楽しいという感じじゃない。
いつもと変わらない顔でオレを見下ろしている。
玄関の置き物を壊したことへの謝罪を目に見える形で行わせようとしているだけでそれ以上の意味はないのかもしれない。からかったり嘲ったりするわけじゃない。どこまでもフラットな態度。
当たり前のようにオレの排泄をうながす彼氏。異常なはずなのに彼氏からはオレの行動が遅いことに対して急かすような空気が出ている。漏らさないオレが悪いみたいだ。
人の家の玄関で漏らすなんて人の尊厳を捨てるような行為だ。
はっきり言って興奮する。
普通ならありえない。
自分の妄想の中ですら彼氏の家の玄関で漏らすなんてシチュエーションはなかった。
排泄を見られたいとかそんな性癖ないと思っていたのにオレは興奮している。自分が小便をするところを人に待っていてもらっているというおかしな状況に鳥肌が立つ。
彼氏から何かをされているわけでもないのに感じる圧力。
今にも逃げ出したくなるような張りつめた空気の圧迫感。
鏡に囲まれているだけで殴られたわけでも縄で縛られているわけでもない。
それなのに動けない。
「寒い? 鳥肌立ってるし、乳首も……」
鏡と鏡の間から見ているだけだった彼氏がオレに向かって手を伸ばしてきた。
思わず逃げると肩が鏡にあたる。
とっさに倒れかけた鏡を押さえる。
「玄関の置き物どころか鏡も壊す気か? 鏡、割ったらその破片で俺の名前掘るぞ」
鏡を押さえている手から力が抜けそうになった。
背中に彼氏が指先で文字を書く。
怖いと思った時には痛みがあった。
爪を思いっきり突き立てられた。
ゾクゾクとした快感が背筋を突き抜けていった。
ケンカをして殴りつけられた時の打撃とは全く違う。
痛みというよりも強い刺激に感じる。
あからさまな匂いに「漏れたのは別のものか?」と彼氏が口にする。
勃起しだしているのもパンツの中に射精しているのがバレているのも恥ずかしい。気持ちがいい。
オレを取り囲んでいた鏡を彼氏はまとめて片付けてしまう。
危ないと思ったんだろうか。玄関の靴箱と一体型になっている鏡以外が消えた。
同時に感じていた圧迫感も薄れて緊張感が切れた。
ほっと息を吐き出していると髪の毛を引っ張られた。
暴力というほどの乱暴さはない。恋人同士のじゃれあい程度のものだ。
「これで終わると思った?」
彼氏に太ももの付け根部分を踏まれる。
オレの正面に立つのではなくやや斜めに横に彼氏は立っている。オレの正面は靴箱と一体型の鏡だ。
太ももの付け根ではなく勃起したチンコを踏まれたい。鏡にだらしなく顔を緩ませて口の端からよだれを流している自分が見えた。彼氏にこの顔を見られているのだと思うと恥ずかしくて死にたくなるのにチンコに血が集まっていく。ズボンから取り出したい。思いっきりしごきたい。そんなことが許されるわけがない。
息が上がっていく。鏡がなくなって異様さが薄らいだのにズボンを履いたままなので勃起したチンコが痛むし、自分の吐き出した精液の匂いが漂っていてドキドキする。
鏡に囲まれていなくてもこの場が彼氏の家の玄関だと意識すると自分の状況が恥ずかしくて心臓が痛くなる。鏡に映る自分に興奮するなんてナルシストみたいだが、股間部分だけ色が変わっているのが視線を正面にすると分かって最低でたまらない。
あえて下を向いて自分の股間を見ないでも鏡を見て自分の状態が分かってしまう。
苦しい。股間も胸も痛い。
「ひぃ……な、なに?」
「乳首が尖るって普通か? 普通こうなんの?」
太ももをぐりぐりと踏んづけていた彼氏の足がオレの胸を撫でる。
靴下の裏の汚れている部分が胸に擦れつけられていると思うと今までで感じたことのない快感を覚えた。
足の裏特有の臭いにおいがツンと鼻が痛くなるのと同時に撫でるだけだった彼氏の足が力を入れて俺の胸を押してきた。乳首を足の指で引っかけるように動かされて思わず泣いた。
総長に指でつままれたり引っ張られたり噛まれたりして敏感になっていたこともあるが靴下の布地や匂いや肌で感じる空気感にオレは征服されている、そう思った。
「ほら、漏らせよ」
崖から突き落とされるようでいて抱きしめられているような不思議の感覚の中でオレは言われるままに玄関先で漏らした。
精液と小便と足の裏の匂いの中で快感に震えるオレはどうしようもない人間だと思う。
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