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彼氏:アンタ以上に大切じゃないから気にすんな4
「したいのか、したくないのか」
俺の詰め寄りに顔を真っ赤にして、歯磨き粉が口元を汚したまま「したい」とつぶやいた。
「なら、さっさと口をゆすげ」
俺が中断させたようなものだが、恋人に不満そうな気配はない。
浮かれたようにヘラヘラしている。
体をふいて俺がパジャマを着るまで恋人は手を後ろに回して、静かに待っていた。
パジャマを着ると眠たくなってくるが、恋人の期待を無下には出来ない。
「服は全部脱いで、洗濯機の横の籠に……そう、入れとけ」
全裸の恋人にスリッパだけ履かせてトイレまで案内する。
そして思い出す。大切なものを玄関先に置きっぱなしだ。
「え? おぃ、ちょっと」
俺を呼び止めたいのか困惑した恋人の声を聞きながら、早足で玄関に置いたままにしていたコンビニ袋をとる。
トイレに戻ると床を覗きこんでいる、もとい、ケツを上にあげて腰を振って誘惑してくる変態がいた。
当然のように勃起している恋人のモノは全体的に濡れている。
しごいていないなら、腰を振ることで空気から刺激を受けて感じているのだろうか。
「何してんだ、変態」
背中を撫でると「ぶぎゃっ」と死にそうな小動物の鳴き声。
恋人は気まずそうにトイレの中にある棚というかくぼみを指さした。
便座の横、座った時に横を見るとクリスタルガラス製の細工小物が目に入るよう、飾りつけて置いている。
個数が足りない。
不用意に触って床に落としたらしい。
床に落ちた細工小物を取るために便座に縋りつくような格好で、頭を下げていたという。
知ってはいたが学習能力が低い。あるいは、欲望に忠実すぎる。
「わざとか?」
「違うっ! ちが、う……たぶん」
すぐに否定した後に声は勢いがなくなり、しぼんでいった。
わざとではないが、この後の展開を楽しみにしてしまった気持ちがあるから、結果的にわざとだったのかもしれないそう思っている。
「あとで探しておくから、放っておいていい」
「でも、大切な……」
「アンタ以上に大切じゃないから気にすんな」
当たり前のことを当たり前に言っただけだが、恋人は驚き過ぎてしゃっくりをし始めた。
体の反射だ。止めようと思って止まるものじゃない。
恋人を全裸にしてトイレに放置したことで体が冷えたのかもしれない。わき腹を撫でると「ひぐぅ、ひっ」としゃっくり以外の音が混じった鳴き声が上がる。
なんでもなるようにしかならない。
俺は肩にかけていたスポーツタオルで恋人の背中から尻を叩く。
何を言ってるのか判別できない声をしばらく聞くことにした。
便器の中に先走り液がしたたる。
トイレの中に響く、一定のリズムの水音とタオルを振り上げて叩きつける音と引きつった呼吸音。
体中がビクついている恋人に後ろから抱き着いて乳首を引っ張る。
「……あっ、ひぃ、ひぅ、イグゥゥ、イググゥ」
「イクな。耐えてろ」
がに股になって腰をへこへこ動かして「いぎだい」と言い出す恋人に耐えることも学ばせるべきか考えてしまう。
甘い顔をしてなんでも許可を出したい反面、そもそも恋人は「苦手なものが好き」な人種だ。
したいと訴えていることを簡単に許可するよりも、焦らしている方が喜ぶのだろう。
ピアノの鍵盤に指を滑らせて音を出すように乳首周辺で指を動かす。呼吸が難しくなるほど恋人はひいひい言っている。
「思いっきりつねられたいんだろ? なら、逆にこういう感じにしとく」
「……ひぅん、つめが、あた、ひっ、く」
恋人はしゃっくりか、喜びから声が詰まっているのか分かり難い。
コンビニで買ったコンドームを取り出す。
右手の人差し指と中指をコンドームの中に入れて「足を開いて、もっとケツをつき出せ」と恋人に指示を出した。
未だにしゃっくりが止まらないままの恋人は体を痙攣させている。自分がされるのことが何なのか分かっているのかいないのか、恋人は素直に従った。
コンドーム越しに恋人の尻の中に指を入れる。
浴室での時とは、また意味が違う。
「切れたり、イボがあったり、……そういうのは大丈夫そうだな」
恋人本人に聞いても体の不調は隠されそうだ。
痛みを喜ぶ変態な恋人は重大な病気を見逃す可能性がある。
今から俺がちゃんと見ていないといけない。
「触るけど、射精するなよ。耐えとけ」
勃起した股間のサイズや重量感。角度や質感。
重度のオナニー狂いなら、普通はありえない圧を股間に加えている可能性がある。しこりなどがあったら中断して病院送りだ。
「今のところ平気そうだな」
棒も穴も敏感で強靱なところ以外は健康そのもの。
我慢できないと言いながら、十分に耐えている。
やればできるじゃないかと褒めてやると精液ではなくおしっこを漏らした。
便器の中にじょろろっと出しているので、悪いことはない。
俺が不用意に褒めたせいでもある。嬉ションだ。
恋人がチンポマシーン を使用している姿を思い出すと自分で股間や乳首をそれとなくイジって楽しんでいた。
今は完全に待ちの姿勢でだ。
何かをして欲しいというおねだりも一人で先にイジることもない。
「俺の身長に合わせようとしてる、中腰の維持とか……大変じゃないか? もっと、壁に手をついたりしていいからな」
待ちの姿勢と言いつつ、俺が挿入しやすい位置になるように微調整しているのは感じている。
自分の勃起したモノにコンドームをつける。
俺のサイズは自分で言うのもおかしいが平均的だ。
顔だけ振り返って俺を見る恋人に「サイズに不満はあるか」とゴムがついた股間を見せる。凝視された。
「物足りないって言うなら、こういうのを追加してもいいしな」
トイレの飾り棚に置いていた大きめのビー玉を二つとる。
俺の家のトイレにはトイレの出入り口近くに手を洗うためだけのちょっとした水道がある。軽く水で洗ったビー玉をあたらしく開けたコンドームに入れて縛る。
取り出せないほど奥に入り込むと困るが、それを理由にして病院で検査を受けさせるのもいいかもしれない。
医者に弄り回されて勃つのは浮気とは思わない。
生理的な反応だ。
恋人のことだから性的な反応でもあるのかもしれない。
中年のおっさんを気持ち悪いと思わない優しい奴だ。
ゴミクズでしかない人間未満の存在がおっさんでサッカーをしていたことがある。おっさんをサッカーボールにするだけでは飽き足らず、ゴミクズどもはおっさんの財布からお金を取って笑っていた。
お金がほとんどないことを嗤いながら、五百円玉を持っていこうとしたゴミクズを恋人は爽快に殴り飛ばしていた。
恋人はおっさんに一万円を渡して駅まで送って行った。
俺とのデート中じゃねえかという不満は、ボロボロのおっさんの前ではもちろん言えない。
地元を牛耳る悪の大将である恋人は急にお金を渡されることがあるという。
それはゴミクズが誰かを脅したお金の一部だ。
上納金のように渡されるお金を受け取りを拒否するのではなく、被害に遭った相手に渡すことでバランスを取ることにしているらしい。
お金を受け取らなかったら、無駄にカエルを投げつけてくる嫌がらせをされることもあるという。悪の大将も楽じゃない。
ともかく、ビー玉挿入には医者のおっさんに触診されるというオプションについて話すと恋人はよだれを垂らした。
口元が緩くなっている。
アホ面だったが「羞恥プレイは守備範囲外なのにスゲー興奮する」と素直すぎてアホなことを言い出した。
「医者通いが癖になると困るから、出すためにエア縄跳びとかを試してからな」
そもそも奥に入らないように気をつければいい。
俺の意見にいつの間にかしゃっくりが止まっていた恋人は「オレの彼氏は天才すぎる」と感激した。
褒められた照れくささからビー玉の入ったコンドームをスポーツタオルと同じ要領で振り上げて尻を打つ。
「あぐっ」
「妄想にトリップしないで俺に集中」
「はうぅぅ」
「かわいい小動物か?」
俺の疑問に恋人は首を振る。
目をこすりながら「オレに勃起するんだってのが、嬉しかったし、なんか、いっぱいオレが思いつきもしないことをオレのために考えてくれて……胸がいっぱいになった」と言い出した。
耳が真っ赤になっている恋人はここに来て変態性よりもかわいさをアピールし始めた。
変態である事とかわいさは両立するのかもしれない。
「ローションねえから。サラダ油かオリーブオイルを使おうと思ってたんだが……なんか、全然いけそうだな」
先走りで恋人の陰茎は壊れた蛇口状態。
ずっと水漏れしっぱなし。
その影響か後ろの穴も何だかんだで濡れている。
便器の周りはどうせ後で掃除をするのでいくら汚してもいい。
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