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第11話 最期の希望

「……まって、アリスさん」 「んっ、なに……?」 思わず後ろを振り向いた。 人を乗せて運転している最中に、何で危険な事をと思われるだろう。だが今、そんなのはどうでもいい。 アリスさんの瞳いっぱいに溜まって、すぐにでも零れ落ちそうなそれを見た時、ある一つの噂を思い出した。 パンデミックに侵されたαの身体を、唯一救える薬…。それはとても信じ難く、そして美しい。 「今泣かないで、アリスさん! 健太の家、もうすぐなんでそれまで我慢して下さい!」 馬鹿な僕の頭の中で、何かが結び付きそうなんだ。 …もし僕の勘違いだったらそれまで。それでも、アリスさんの涙は、奇跡を起こしてくれるかもしれない。 健太の顔色がわかりやすく変わるとき。 それはいつも、アリスさんが関係していた。 わかりにくい健太の、わかりにくい愛。 こんな世界で、危険と隣り合わせの毎日を過ごす中でも仕事を続けた健太の本当の思い。 アリスさんがそうであるように、 もしかしたら健太も本当は、アリスさんの事を…。 「着きました。ここの203号室が健太の家です。 …スペア預かってるんで、これ使ってくれて構いません」 「…え?山内君は?」 「僕も後で行くんで、先にアリスさんが行ってあげて」 「…ん、わかった!ありがとう、山内君!」 駆け出したアリスさんの背中を見送る視界は、酷くぼやけて大袈裟に滲んで、近くの街灯を必要以上に輝かせた。 ああ、天使のように煌びやかな君。どうか僕の大切な友達を、救ってください。

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