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第13話 涙の温度
俺が思っている以上に、俺は健太君を想っていた。
こんな事になるのなら。
伝わらなくていいなんて思わずに、その気持ちだけでも言えていたら、これ程までに後悔することはなかったのだろうか。
それ以上は望まない、
それ以上は求めない。
隣で話していられるのならそれでいい。
そう思っていたのはきっと、その環境があるのが当たり前だと疑いもしなかったからだ。俺はただ、恵まれていただけだったんだ。
健太君はいつまでもそこにいると甘えたことを考えていたからバチが当たったんだ。
「健太…君、あの時…じゃあまたって言ったよね…?
健太君に気に入ってもらえるように…俺香水変えたんだよ……。なんで目開けてくれないの?
なんで勝手に……っ、いなくなるの…?」
もう止まらなかった。
1度口に出せば、押し殺していた言葉達は留まることなく溢れ出す。
健太君にはずっと俺の気持ちなんか知られなくていいと思っていた。
ずっと気づかれなくてもいいと思っていた。
───思っていた、はずだったんだ。
「健太君、ねえ…健太君っ!!」
止め処なく溢れる涙は、健太君の頬を濡らし、首を濡らし、俺が縋り付いた服の胸元を濡らした。
怖いくらいに冷たい手と違い、まだその胸は温かい。
…身体に触れていればわかる、微かに動く心臓の音。
でもそれも、もう微弱でいつ止まってしまうかわからない。
酷いよ。健太君、どうして俺に教えてくれなかったの。
────本当は、
好きだって…言わせてほしかった……っ。
こんな事になるのなら、俺は健太君に生きる理由を貰っていたんだって、それくらい伝えさせてほしかったよ。
「健太君、健太君……大好きだよ。俺健太君のこと本当に…
っ、愛してるんだよぉ…っ!」
叫びにも似た俺の声は、静まり切った部屋いっぱいに響く。
どんなに大きな声で伝えても
それが健太君に届く事はもう……。
と、
その時だった。
「……っ、ぅ」
「健太君?!」
健太君の喉元が、ピクリと動いた。
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