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#7

「なんとか今日は休み取れてよかったです。 明日…半年記念だし」 「健太君そういうのどうでもいいってタイプだと思ってた! …覚えてくれてるとか俺めっちゃ嬉しい」 以前から思ってはいたけれど、 アリスさんは表情が忙しなくコロコロと変わる。 ついさっきまで名前の事で頬を膨らめていた癖に、 今は心の底から幸せだとでもいうように長い睫毛をはためかせて喜んでいるものだから、 『お前表情筋死んでんじゃね?』 と常々言われ続けて来た俺も 最近アリスさんの前ではつられてよく笑うようになった…気がする。 あくまで自分の中での話だ。 そしてそんな風に変われたのは、 紛れもなくアリスさんのお陰──。 「…じゃあ今夜は、いっぱい甘えていいんだ?」 ……なんて、この人すぐに調子に乗るから そういうことは絶対に言ってやらない。 「とりあえず飯です。そろそろ野菜傷みそう」 「も〜〜!!」 微かに香るバニラは、 まるでアリスさんのために作られたかのように この人に似合う。 数あるバニラ系統の香水の中でこれを選ぶあたり、 もしかしたら好みが似てたりすんのかなって 少し嬉しく思ったりしたのも勿論一生秘密だ。 「新しい職場…クレープ屋?ですよね。 …ソレ付けてていいの?」 俺が野菜を炒める様を シンクに肘をついてじっと眺めるアリスさんに問う。 …危ない、邪魔って言っても聞かないから 料理中も離れないのはもう諦めた。 「うん。タピオカとかたこ焼きもやってるよ! …俺Ωだからフェロモンが〜って言ったら即許可降りた。 制服で首元隠れるからさっ」 隠れる…ね。 「番いるって言ってないんだ」 「え〜?言ってもいいんだよ? 言って欲しい??」 「…………別に任せます」

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