28 / 63

#10

「あっ、んん……」 すぐ隣には出来立ての料理があって、 互いに腹も空かせているだろうに、 俺たちは一体何をしているんだろうって 馬鹿らしくなる。 けれど、こればかりは本能には抗えないと言うもので、 俺達は場所もムードも無視して求めあった。 シンクに手をついて必死に身体を支えるアリスさんの 紅潮した顔が底に映る。 その隣の獣のような目をした化け物は 何処までも欲に塗れた表情をしていて、 まるで自分じゃないみたいだ。 「やば…。気づいてます?コレ。 下着の上からでも濡れてんのわかる」 グリグリとアリスさんの尾骶骨に自身の昂りを押し付けながら 尻を指でなぞれば、そこからトロリと溢れるアリスさんの蜜が指にまで伝った。 「んあ…や、だぁ……焦らさないで…っ」 「すぐ入りそう」 「もう…いい、からっ、早く……」 アリスさんは自ら下着を下ろすと、 その手のまま俺の昂りを上下に扱く。 後ろ向きで、しかも絶対見えていないくせに、 俺だけじゃなく、何人も、何十人もを悦ばせてきた巧妙な手つきで 早急に俺を限界近くまで追い詰めていった。 「はぁ……。タチ悪いなほん……っと」 「んうっ……ぁ…ぁあっ、う…ン……っ」 欲のままアリスさんに突き上げたそれは、 自分自身の快感を伴いながらもアリスさんを確実に犯す。 潤滑さはあるものの、 やっぱり少しも慣らさずにねじ込んだそこは狭く、苦しくて。 シンクに映るアリスさんが一瞬顔を歪めたのが申し訳なかった。 ただ、勿論そんなことを気にする余裕など とうに残っていないわけで、 押し進めながらアリスさんを強引に慣らした。 その痛みを身をもって知っていながら 本当に俺は、最低な恋人だ。 この人相手だといつも自分を忘れて 加減の一つもまともにできやしない。 コントロールの効かないこの身体を憎みつつも、 そんな俺を華奢な身体全部を使って受け止めてくれるアリスさんに この上ない愛おしさが込み上げた。 「や、ぁ…待って健太く……、も、出ちゃう…っ」 「…早すぎません?っ、もう少し…我慢ね」 「ぁう、!」 俺は蜜を溢れさせて止まらないアリスさんの昂りを強く握り、 容赦なく腰を打ち付けた。 アリスさんの涙なのか唾液なのかもわからない雫がシンクに落ちて、 弾けて散る。 そういえば、窓…開けっぱなしだったなとか。 アリスさんの声、外に聞こえるんじゃないかなとか。 たまに訪れる冷静さを取り戻す瞬間は そんな事もを考えたりもしたけど。 「ちょ、……っあんま、締めんなっ、…ン、」 「う、んん…っ、一緒に…イく、のっ」 すぐさま襲いくるアリスさんからの刺激に そんな考えはどこかに飛んでいってしまう。 本当に、狡い人だ。 「……あーあ。 ご飯の前に、シャワーとお掃除しなくちゃじゃん」 「…っすね」 本能に抗うのは難しい。 今日も何とか寸でのところで抜き出したせいで アリスさんの太腿には俺の放った白濁がべったりとついている。 「健太くん…、中でもいいんだよ」 「………そのうち」 だが番という型にはまってもなお、 アリスさんにはとても言えないような事をしている身では …未だに覚悟を決めきれない。

ともだちにシェアしよう!