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#19

「…え?」 アリスさんの口から飛び出した言葉に 動揺を隠せなかった。 アリスさんがあの店を辞めてから もう半年も経つっていうのに、どうして…。 まさか、まだ店の誰かと繋がっているとでもいうのか。 だとしたら一体誰と。 「…それ、誰かから聞いたんですか?」 背中に冷たい汗が流れる。 店のキャストの中にαがいるなんて、 黒服すらも知らないはずだ。 だって俺は自走で、店舗にもよほどの用事がない限り顔を出さない。 もしかして、店長がアリスさんに何かしたのか…? 「今日ね、俺がウリやり出した頃からずっときてくれてたお客さんがお店に来て教えてくれたんだ。 健太君ならその子知ってるかなって…ちょっと気になった」 「…あー、あんまり俺そういうの興味ないんでわからないんですよね」 そうか。 店の関係者なんかじゃなくとも、 アリスさんには、俺には想像もつかないようなところにも繋がりは多いんだ。 裏表もなく、客相手でも心優しく接していたであろうことは 今日ついた人の良さそうな男から聞いた。 いくら職が変わったといっても、 アリスさんは以前関わりのあった客達を蔑ろにはしないのか。 ちょっと…想定外だった。 アリスさんのそんな所、 素敵だとは思うけど今は…少し、困る。 「健太君、ちょっと疲れてるんじゃない? ベッド行こうよ。俺マッサージしてあげる」 俺の様子がおかしい事に アリスさんも流石に気付いてしまったんだろう。 わかりやすく気を使われるのが申し訳ない。 格好悪いな、俺。 その夜は、珍しく口数の少ないアリスさんに甘えさせてもらうことにした。 アリスさんも疲れているだろうに。 急に家に来るなんて アリスさん自身ももしかしたら何か嫌なことがあったのかもしれないのに。 俺は自分の隠し事がバレないことに必死で…。 隣でスースーと寝息を立てるアリスさんの額を そっと撫でた。 ごめんね、アリスさん。 俺なんかに気を遣わせてしまって。 いつまで経っても訪れない眠気との戦いの末 外が白んできた頃ようやく俺も眠りについた。 アリスさんのぬくもりが、 いつか消えてしまうんじゃないか。 番を解消してほしい…とか、 もし言われたら 俺は、どうしたらいいんだろう。 悪いことばかりを考えて眠る日は、 決まって息苦しくてたまらない。

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