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望んだ愛
彰が産まれた日。僕は絶対に手放さないと誓った。病院でも片親のΩが子育てをするのは社会的にも難しいと言われて養子を勧められた。検診を受ける度に言われる。
保育園に申し込む時もそうだ。
何かある度にΩ性、α性について言われる。辟易しながらそれを何度も断った。
必死に仕事を探しても子どもがいるから、Ωだからと断られる。
今日は街まで出かけてすずを訪ねた。
待ち合わせのオープンカフェで彰を子ども用の椅子に座らせる。持参したおやつを彰に渡すと「マンマァ~」と声を上げて喜んで口に運んだ。
「お待たせっ」
向かいの通りからすずが走ってきた。
「わぁ、彰ちゃん大きくなったねぇ~」
すずは彰のすぐ隣に座ると頭を撫でた。
彰は顔を強張らせてじっと僕を見る。
「相変わらず人見知りなのね?」
「そうだね。保育園でも先生に懐かないみたいで、泣き寝入ることもあるみたいなんだ」
椅子から抱っこをせがむように手を伸ばしてくる彰を抱き寄せる。
「それって大変じゃない?」
「そうだね。前よりも酷くなってるって園からも言われてて育児相談に行ってもさ、いつものことだよ」
ひとり親だけではどうしようもないとか、祖父母を頼るとか、人と接する機会を増やすようにと言われる。
「友紀瘦せたんじゃない? 大丈夫? ちゃんと眠れてる?」
「うん。何とか大丈夫だよ」
抱っこされてご機嫌になった彰が、「ゆぅ、マンマぁ」と声を上げる。
「ゆぅ?」
「うん。僕のことだよ」
彰には『お母さん』や『ママ』とは呼ばせていない。僕がΩなのは仕方がないけど、彰がαだと分かれば危険が伴う。保育園や役場は仕方がなくても、近所や公の場では隠していたい。
「無理はしないでよ」
すずに頷いて、「じゃあ、行こう」と促して立ち上がった。
今日は美容師のすずにお願いして彰の髪を切ってもらう予定だ。
いつもならうちのアパートに来てもらうが、益々口うるさくなった近所からの苦情になるだけ人の出入りを減らしたかったから今日はここまで出向いてきた。
「ごめんね。休みなのに」
すずもそれを承知してくれた。引っ越し先の心配もしてくれて心苦しい。
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