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望んだ愛
他の男性に身体を許した事は一度もないけど、確かに大切に扱われて愛された。
彰が産まれてからは一度もここには来ていない。
「……アキ」
姿は見えないけど、その香りは確かにここにあった。残り香なのだろうか。
それとも何か甘い花の香りだろうか。
僕の欲求による勘違いだろうか。
アキ……、アキ。
ぎゅっと強く手を握り締めた。
「ふぇ、あ、わぁあああん」
急に火が付いたように彰が泣き出した。びっくりして、「しょうっ、彰、どうしたっ」と慌ててあやす。
子どもの泣き声は響く。人気のない場所では余計に響いた。
「彰、ちょっと、泣き止んで」
背中を何度も擦って泣き止ませようとゆすった。こんな急に泣き出すなんてどうしたんだろう。
驚くような音がしたわけでもないのに。
「彰、彰、どうしたんだよ。急に」
彰の泣き声に人が近づいたことに気が付かなかった。
「ここで何をしている」
男の声に振り返った。
外灯に照らされてその顔ははっきり分かった。
「……アキ?」
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