22 / 63
歪んだ関係
甘い香りが広がって、伸ばされた腕で抱き締められた。
急に泣き出した彰が泣き止んで、驚いた僕は反応が遅れた。急に抱き着かれたのを許してしまった。
たくましい腕と胸。それはあの夜と変わらない。
「ち、ちょっと、待って……あの、放してください。子どもがつぶれる……」
「ああ、すまない」
ぱっと腕を離したアキを見上げる。あの時と同じ声。同じ顔。
探しても見つからなったのに、いまこんなにも近くにいる。
「泣き声はその子だったのか?」
泣いていたはずの彰はにこにこと笑って両腕をバタつかせている。
「ああ、すいません。急に泣きだしてしまって、すぐに出ていきます」
「それはかまわないが……時間が大丈夫なら話でも」
アキはホテルを指さしたが、「こんな格好だし、子どももいるので」と断った。
普段着では入りにくい格式の高いホテルだ。抱っこ紐をして入るようなところではない。
本当は話したいことがたくさんあるのに、突然の再会に動揺して何を話していいのか、何から話していいのかが分からない。
甘い、匂いが気になる。
「それなら送って行こう」
「いえ、駅ならそこだし……」
「こんなに寒いんだ。車はそこに止めてあるからちょっと待っていてくれ」
アキは慌ててホテルに向かって行った。
バクバクと鳴り続ける心臓が痛いくらいでぎゅっと彰を抱き締める。寒さで白くなった息が熱いくらいだ。
「彰、どうしよう。アキだよ」
2年ぶりに会ったアキは何も変わっていなかった。あの日と同じ声音で甘い匂いに包まれていた。
甘い匂いが僕のΩを刺激する。これがαかと改めて意識させられて、こんな状態で車に乗せられたらどうなってしまうか分からない。
あの日だって、発情期でも無いのに誘惑してしまった。発情を抑えることができなかった。上等なαが欲しいと身体が欲してしまった。
「せっかく会えたけど、どうしよう、2人きりになんてなれない」
首を横に振ると手に持った荷物をぎゅっと握りなおして庭から外に出た。
駐車場に出て周りに誰もいないのを確認して急ぎ足で駐車場の外に向かう。
「ふぇぇあああっ、ぅゎああん」
ともだちにシェアしよう!