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歪んだ関係
急に彰が泣き出した。さっきといい、今といい今日はどうしたんだろう。急に機嫌がよくなったりして……。
「しょう、ちょっと静かにして、みつかっちゃうよ」
ぎゅっと抱きしめて彰を落ちつかせようとするが、大泣きして反り返る彰に驚いて持っていたカバンを落とした。中身が零れてしまう。
「ああ、彰、ちょっと、どうしたんだよ」
拾おうとしても抱っこしたままでは足元が見えない。
それに駐車してある車の陰になっていて落ちたものがよく見えなかった。
「ユキ、ここにいたのか、どうした」
走り寄ってきたアキがカバンを拾ってくれる。落ちた物も拾い集めて、「これで全部か?」と聞かれたけど、彰が泣き続けていて確認できない。
「一度降ろしたらどうだ?」
言われてずっと抱いたままだったから体制に疲れたのだろうと、抱っこ紐から彰を降ろした。
「ちょっと貸してみろ」
大きな手が彰を抱き上げる。
「彰、ダメっ、彰を取らないで」
慌てて彰を抱き締めた。
アキはそんなつもりはないのだろうけど、どうしてだろう胸がざわついてアキに彰を託すことはできなかった。
「か、カバンありがとう。大丈夫。もし落ちてても大丈夫だから、僕は帰る」
ぎゅっと抱きしめたままカバンを奪うようにして握ると小走りに歩き出した。
彰は余計に泣き出して、「彰、どうしたんだよ」とつぶやきながら歩き続ける。
「ユキ、そんなに慌てるな。子どもを取ったりはしない。少し休んでいけ」
追いかけてきたアキがカバンを奪う。そして腕を掴むとホテルへと向かって歩き出す。
「いいって言ってるだろう。僕は帰るから……」
「子どもが泣いているだろう。寒いのかもしれないし、少し休ませてやれ」
アキは言いながら、「帰りは送っていく」と強引に僕をホテルに連れて行った。
ホテルに入ると泣き続けていた彰が少し落ち着いて、「ほら、寒かったんだよ」とアキに言われた。
空調の効いたホテル内はほっとする暖かさだった。フロントでアキがカードキーを受け取って、「俺の部屋」と言ってエレベーターに向かった。
「桐生様、お待ちください」
スーツを着た男が追いかけてきて、閉まりそうなエレベーターに乗り込んできた。
「お客様ですか、申し訳ありません」
僕に気が付いて男は深々と頭を下げた。
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