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歪んだ関係
Ωはαと同じく人口が少ない。Ω同士出会うことはあるが、噛み跡を見るのは初めてだった。
「ユキ?」
じっとして動けずにいる僕にアキが気が付いて、その視線にも気が付いたのだろう。
「ああ、沢木は俺の番だ」
頭から冷水を浴びせられたようだった。
ぎょっとしてアキをまじまじと見つめる。
「つ、番……」
声が震えた。
しがみついていなければ抱いている彰を落としてしまいそうだ。
「ご、ごめんんさい。僕帰ります」
彰を抱きしめたままカバンと掴むと入口に向かった。
なんて恥知らずなことをしてしまったんだろう。こんなところにのこのこやってきて。僕は何をしたかったんだ。
こみ上げてくるものを唇を噛んで抑える。
僕に子どもがいるのと同じようにアキの時間も進んでいる。あの時は惹かれ合っても今は違う。2年も経ったんだ。
現実が押し寄せて、早くここから離れたかった。
「ユキ、待って、送るから。コートも忘れている」
慌てるアキが呼び止めて背中から引き寄せる。彰を抱いたままの僕がバランスを崩してアキが抱き留めた。
甘い香りに包まれる。アキから一気に広がる香りに触発されて僕のΩが反応する。
「放して、放してください。近寄らないでっ」
アキの腕から逃げる。
「桐生様っ」
慌てたのは沢木だ。沢木は僕とアキの間に入るとアキを部屋の方に押して僕から遠ざけた。
「何で、なんでΩに反応するんですか?」
沢木は慌てて僕に言った。
番のいるΩは番相手のフェロモンにしか反応しない。それはαも同じはずだ。アキの番が沢木なら沢木にしか反応しないはず。
だけど、今、確かにアキは僕に反応した。
沢木は急いで僕に近づくと襟を掴んだ。そこは真っ新だ。噛み跡なんてない。
「どういうことですか?」
沢木の声は冷たい。
「何で、噛み跡のないΩに子どもがいるんですか?」
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