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繋ぎ止める運命
「それは、桐生に乗り換えてもいいということですか?」
「ち、違いますっ。彰の父親のことです。もうずっと会っていないし……愛しているかどうかは分からないってことです」
「あなたのパートナーは他に番った相手がいるんですか?」
沢木が訝し気に聞いた。
「あ、え、えっと……」
ここで頷けば彰は愛人の子だと思われてしまう。僕が独り身だとばれてしまう。
「ち、違いますよ。家族って、ほら、一緒にいすぎて分からなくなることってあるでしょう。彼は単身赴任中で、僕と彰だけだから……。僕は今の生活を続けます。桐生さんの元には行かない」
沢木は、「そうですか」とため息をついた。
「運命に囚われているのは私も同じですね。今日のことは忘れてください。気にしないで。あなたはこれまで通り生活してください。どうか、桐生のことも忘れてください」
沢木は頭を下げると車を発進させた。
アパートの前に車を止めて、運転席から降りた沢木がカバンを持ってくれた。
「あの、ここで大丈夫です」
沢木は玄関までカバンを持ってくれた。
「困ったことがあれば連絡してください」
沢木は上着のポケットから名刺を取り出すと差し出した。それを受け取る。
「葉山、友紀さん」
玄関横の表札を見て沢木が確認した。
急いで迎えに行かないと……。
彰が熱を出したと保育園から連絡があった。
新しい職場は保育園から遠い。バスに乗って何度も時間を確認しながらそわそわと落ち着かない。
保育時間はまだ余裕はあるが、熱を出したのは昼前で急いで来てほしいと連絡が来たのは夕方だった。仕事中で携帯に出られなかったことと、新しい職場をまだ保育園に届けていなかったのが原因だった。
保証人になってくれていたすずに連絡が行って、何度も僕に連絡をしてくれていたらしい。
バス停から走って保育園に行くと、「葉山さんこっちです」と担当の保育士に呼ばれた。
彰はぐったりとしている。
「先日から保育園でおたふくかぜが流行していて、彰ちゃんは予防接種受けていますか?」
「受けて……」
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