36 / 63

繋ぎ止める運命

「すず、こっち」  慌てて返事をすると、すずがすぐ隣に座って、「彰大丈夫?」と聞いた。 「すず。来てくれてありがとう。ごめんね。仕事中だったんでしょ?」  すずは大丈夫と笑って、彰を心配そうに見つめる。 「こちらは?」  すずが向かいに立ったままのアキを見上げる。 「えっと、桐生さん」  首をかしげるすずに、「知人」と付け足すが、「桐生アキ……」と自己紹介されてしまった。  すずの表情が見る間に代わって、「どういうことっ、何でアキがここにいるの?」と声を荒げた。 「す、すず、ここ病院だよ」  慌てて制するけど、「友紀どういうこと。あんた、探しても見つからなかったって言ったじゃない」と続ける。 「ちょっと、すず。すず。後で、後で説明するから」  興奮して声を発するすずを抑える。 「葉山さぁ~ん。葉山彰さぁ~ん」  診察室のドアが開いて看護師が声をかけた。 「はいっ、ハイッ。葉山ですっ」  彰を抱いたまま立ち上がる。 「カバン、すず。かばん持ってきて」  ここにすずを置いていけない。アキと2人にしたらすずが何を言うか分からない。 「桐生さんすいません。ご心配おかけしました」  アキに頭を下げて診察室に向かった。急いでアキから離れる。  彰はウイルス性の風邪だった。おたふく風邪では無かったが熱が高く、解熱剤を出された。  脱水症状があって点滴をされることになったけど、彰は大人しくしていた。 「あんまり元気ないね」  いつもなら人見知りで泣き出す彰が今日は大人しくしている。ぎゅっと抱き着いたまま離れようともしない。 「さっきの人、アキなんでしょ?」  再会したことはすずには話していない。再会したあの日にすずと会ってからは一度も連絡をしていなかった。 「うん。アキだよ」  点滴の落ちるしずくを見ながら返事をした。

ともだちにシェアしよう!