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繋ぎ止める運命
「智さんは、すずの恋人です。す、すいません。智さん。僕の番じゃないです」
智に説明するが智は僕を押しのける。
「智さん、後で説明するから」
言っても智は僕を押しのける。
「すずをもう巻き込まないでくれ。仕事中には呼び出されるし、保証人にされるし、アパートの契約だってこっちにまで連絡が来て……」
「と、智さんやめてください。アキは関係ありません」
アキに知られたら困る。
彰がアキの子どもだって事も、僕がひとりだって事もアキに知られたら困る。
持っていたカバンを床に置いて、アキに詰め寄る智を押し下げる。
「関係ないことないだろう。行きずりで子ども作って放置して」
「智さんっ」
大声で遮るけどなおも智は言い募る。
『バチンっ』
大きな渇いた音が廊下に響く。
「智君っ、最低っ」
智のほほが赤くなってすずが叫ぶ。
頬を叩いたすずは強く睨みつけている。
「最低ってなんだよ。最低なのはそっちだろ。友紀ひとりに背負わせて、責任取らないってなんだよ」
振り返った智がすずに言い返す。
「智さんっ、やめてください。僕は、背負ったわけじゃないっ」
すずとの間に入って言い返して、「すず、今日はありがとう、もう帰って」とすずと智を引っ張って病院の外に連れ出した。
「ごめん。ごめん。すず。智さん」
謝る。僕の身勝手な行動に2人を巻き込んでしまって。
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