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繋ぎ止める運命
「それは2人の問題だから首は突っ込まなくていいの」
すずは涙をふき取ると、「甘えていい。私はずっとこれからだって友紀のこと大好きだから」と寝ている彰ごと抱きしめた。
「今日はありがとう」
2人にお礼を言って別れる。沢木とアキは黙ったまま離れて僕たちの様子を見ていたが、話は聞こえていただろう。
「送ります」
沢木さんは険しい表情で告げる。
「彰の、彰の父親は誰だ?」
低く冷たい声でアキが聞いた。
ああ、どうしよう。
「ごめんなさい」
深く頭を下げる。
「謝ってもらっても分からない」
アキは怒っている。その声に怒りがこもっている。
沢木の手には僕のカバンが握られている。
「桐生様、外で話すことでもないしょう。彰さんは熱があるようだし、少し落ち着いてから……」
彰を見るとぐっすりと眠っている。アキは、「分かった」と言って踵を返した。
「車に乗ってください」
沢木に促されて車に乗り込んだ。アキは後部座席に並んで座ろうとして、引き返して助手席に座り直した。
「もう一度色々とお話をお伺いしたいのですが、彰さんが落ち着いてからにしましょう。明後日の午後にお迎えに行きます」
沢木はそう言うと車を発進させた。
アキは機嫌が悪そうに助手席から外を眺めていた。
アパートに着くとこの間と同じように沢木がカバンを持ってくれた。
「なんですこれは」
部屋の入り口のドアには張り紙がされていた。
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