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手繰り寄せられる心

「沢木。もういい」  アキが沢木の言葉を遮った。 「誰の子でもいい。ユキは俺の運命だ」  もういいってなんだろう。誰の子でもいいってどういう事だろう。 「俺は約束を果たした。お前はそれを受け入れろ」 「ですがっ、私はあなたの番です。私の運命はあなたですっ」  沢木は立ち上がって声を荒げた。 「お前の運命は俺じゃない」  アキが言い返す。 「じゃあなんで、ユキさんには子どもがいるんですかっ。運命と言うなら他のαの子どもなんて出会ってからできるはずないんですよっ」  運命の番は惹かれ合う定め。出会ってしまえば離れる事はできない。 「私はあなたに運命を感じていたし、発情だってしてあなたと番になったんですよっ」 「お前が運命を信じているように俺だって運命を信じている。だからお前と番ってもユキに発情して惹かれたんだ。理解できるだろう」  番ってしまえば他のαやΩに発情はしない。  今だってこんなに甘い匂いを発するはずがない。 「だけど、私は……」 「約束したはずだ」  沢木は唇を噛み締めるとソファーに座り直した。  約束とはなんだろう。  彰が抱き締められる事に抵抗してぐずるとアキは手を離した。 「離れてください」  アキに言うとアキは少しだけ間を空けて座り直した。 「2年も我慢したんですよ。あなたが運命だって言うのを私は耐えたんですよ。なのに突然現れて運命だからって奪われるなんて……」  沢木は力無く俯いてボソボソとつぶやく。高校時代からの同級生でずっと側で支えて運命だと信じて番になった相手に運命の番が現れたショックは大きいだろう。先日は身を引くと言っていたけど、それが現実を帯びると受け入れ難いのだろう。 「ユキさんは、桐生を受け入れるんですか?」 沢木が顔を上げる。  この2年間アキを想わない日はなかった。再会してますます想いは募ったけど、受け入れらるかどうかは分からない。 「俺はユキを愛している」  アキはじっと僕を見つめてはっきり言葉にした。  身体中の血が熱を持った。言われて喜んでいる。

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