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手繰り寄せられる心
「Ωの男子の妊娠は女性よりも難しいそうです。それが一晩でなんて僕も信じられなかった。だけど、僕は他に相手もいないし思い当たる事もありません」
母子手帳のページを開く。
「それだけでも運命と……想う理由になるでしょう」
横に座るアキに見えるように母子手帳のページを指差した。
そこには初見の日にちが書かれている。妊娠2ヶ月後半とも。
そこからページを捲って出産の月齢を指差した。
「男の身体は出産に耐えられない。だから2ヶ月早く帝王出産で出すんです」
そう計算すれば彰の生年月日は合致する。
「ショウは……アキラと読める。少しでもあなたに近いように名前を付けました」
アキはじっと彰を見つめて、「俺は、桐生アキヒト。この」と言いながら、母子手帳に記されている彰の字を指差す。
「彰に人という字を書く」
惹かれ合う運命を裏付けるピースが埋まっていく。
「運命とは恐ろしいですね」
沢木は笑った。
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