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甘い契約

同じように彰人も僕の首に顔を埋める。  かがみ込んだ彰人が、「あまり焦らさないでくれよ」というと抱き上げた。 「ち、ちょっと、落ちるっ」  焦って慌てるが彰人は動じずにそのまま寝室に向かっていく。 「焦らしてない」  言い返して大人しくしていると寝室のベッドに座らせられた。ヘッドボードに背中をつけると彰人は僕を挟むように両手をついて、「俺の花嫁。楽しませてくれよ」と呟いて片手で僕の顎を持ち上げるようにして持ち上げるようにして口づけをした。  触れ合うだけを繰り返して、目を開けたまま互いに見つめ合う。 「あの夜を覚えているか?」  彰人に聞かれて頷く。  忘れたことなんてない。ずっと覚えていた。 「あれから他に相手はいたのか?」  他のαがいたと言ったから彰人は信じてくれないかもしれないが、「アキだけだけよ」と伝えた。あれから一度も誰とも恋なんかしていない。肌を合わせたこともない。  あんな行きずりの一夜を共にしたのは彰人だけだ。 「俺もお前だけだ」  彰人は言いながら口づけを再開する。 「あの夜の証が彰なら愛おしくて仕方がない。お前一人に背負わせてしまって申し訳ない」 「背負ったわけじゃないよ。僕は自分で産むって決めたんだから、アキを……忘れたくなかった。あの時確かに僕は愛されてた。その証が欲しかったし、家族が欲しかった」  アメリカに渡るための手続きや叔父の家にあいさつに行ったから彰人には僕の家庭の事情も説明した。僕が家族が欲しいと願っていたことや彰を大事にしていることも伝えてある。 「彰人さんも同じだと嬉しい」  歯に噛むように俯くと、「同じだ。お前が産んでくれて嬉しかった。他の男の子どもだと知らされた時はどんなに落胆したことか。他にαの番かいると言われて絶望した」と顔を顰めた。 「ごめん。だって、沢木さんって番がいるって彰人さんは言うし、僕が負担になったらいけないって思ったんだ」 「沢木との番契約は仕方がないことだったんだが、申し訳なかった」  あの夜はだから本気で浮気だったのだ。  沢木という番がいるにもかかわらず僕と関係を持った。 「もう二度とないから安心しろ」  そうだろう。お互いは運命の番なのだから。  もう誰のフェロモンにも影響されない。

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