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もう一つの運命

 面影も香りもアキを思わせる。僕の大事な、大事な家族。 「……うん。そうだよ」  うなづいた僕の膝に抱かれた彰。その僕を後ろから抱きしめて手元のスマホを覗き込んでいるのは彰人。  床に敷かれたラグの上に引っ付いて座っている。  彰人に見せているのは彰の産まれたばかりの動画だ。 「全部のデータをくれないか?」  彰人は何度もそう言うけど、「ずっと眺めていて仕事にならない」と沢木さんに怒られてデータを一度消されてしまったので、「また怒られますよ」と笑った。  彰人は彰を可愛がってくれる。  アメリカの家に到着して驚いたのは、彰用のクローゼットが用意されていたのと、その中に収められていた服の数だ。  おもちゃもたくさん用意されていて、こんなにいらないと怒ったほどだった。  離れていた時間を埋まるように、彰人と彰は仲良くなって彰は彰人にべったりになった。  甘やかしすぎだと怒っても、彰人は改めないし、沢木にも度々怒られている。  今日は、まだ会ったことのない彰人の兄が訪ねてくることになっている。  アメリカに住んではいても州が違うと飛行機で行かなければならず、忙しい彰人と兄は数年会っていないと言っていた。  結婚して番となった弟の彰人の為に今日はわざわざ会いに来てくれるとのことだった。 「そろそろ来られますよ」  沢木もほとんど会ったことはないという彰人の兄。 「彰、着替えよう」  彰人は立ち上がると、彰を抱き上げた。彰は喜んで彰人に抱きついた。彰人が彰を連れて行った。 「沢木さん、お兄さんは彰人さんと似てますか?」 「写真で見た感じでは似てましたけど」  沢木は言いながら、窓の方に視線を向けた。ちょうど駐車場に車が入ってくるのが見えたのだ。 「私はお茶の用意をしますから、ユキさんは出迎えをお願いします」  背中を押されて玄関に向かう。沢木は続きになっている対面式のキッチンに入っていった。  玄関のチャイムが鳴って、急いで玄関のドアを開けると、「こんにちは」と柔らかい声がした。 「こ、こんにちは」

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