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6.嫌いなはずなのに… **
…意味がわからない。
城での食事以降、姿を見せなかったのに。
なんの知らせも、頼りも寄越さなかったのに。
見送りにすら来なかったのに。
……もう二度と、会えないかもしれないのに。
それなのに、なんでテレビであんなこと言うんだ……
ズキズキと胸が痛い。
ハルのなかで確かなのは、あのとき嗅いだ、ユキの甘い匂い。
暖かい体温。
大きな手のひら。
甘くて優しいテノールの声。
ふわり、ふわりとたち登ってくる甘い香りが肌にまとわりついて、頭がくらくらして…
からだが熱くなって…
どくん、どくん、どくん。
あのときのように、身体に熱い血が巡ってくる。
甘い、甘い匂い…もう一度、嗅ぎたい。
(…っはぁ、っ、だめだ………)
香水とも花とも付かない、魂を奥底から震わせてくるような、あいつのにおい。
すごく懐かしい、いつのまにか忘れていた大切な何かを呼び起こさせてくるような、でも初めて嗅ぐ、甘い甘いにおい。
もう一度あれを感じられたら…
「はぁっ、…はぁっ…はぁっ…!」
ベッドのなかで己をかき抱いて、内側にうずまく熱をどうにか収めようとしているのに、ユキのことをかんがえれば考えるほど身体が熱くなっていく。
(ヒート?ヒート来たのかな…?わかんない、でも、これはヤバい…!あたま、煮えそう…!)
自身はとっくに勃起していた、痛いほどに。
パジャマのなかで熱く固くそそりたって窮屈なそれ。
ここまで来たら、この熱を収める手段はひとつしかない。
ボトムスをくつろげて、自身を取り出した。
「んっ…!!」
触った瞬間、きもちよくて声が漏れてしまう。ソレは先走りでパンツをしとどに濡らしていた…いや、先走りではない、それは…
(っあ、また、おしり濡れてる…!)
パンツを脱いだとたん、後ろの穴からトロリと溢れ出す。
つつつ…ふとももを垂れてくる感覚に思わず「っふぅ…!」と声が出て、ぶるりと身震いする。
ダメなのだ、本当に。
自分を慰める時ハルはいつも後ろの穴まで濡らしてしまう。ハルはこの快楽に貪欲な自分の身体が一番嫌いだった。オメガに生まれてしまったことを一等呪う時間、それは快楽を求めて暴れ狂う身体を諌めるため、ひとりで自分を慰めなければならない時間だった。欲から解放されるために欲を求める、そんな矛盾したオメガの身体が大嫌いだった。
大嫌いなのに、快楽を求めずにはいられない。
ハルはわずかに残った理性で下半身の服を全部取っ払うと、先走りと愛液で濡れたペニスを揺らしながら服を身体の下へひいた。一・二枚の布切れでは防げないと分かっていても。
準備ができたと思った瞬間、もうダメだった。
「っあ!ぁ、あ、あ!」
ペニスをむちゃくちゃにしごくと、あっという間に達した。びゅく、びゅく、若く熱い脈動でタンクから精液をしぼりだし、尿道から熱くドロドロの白い粘液を出す快楽にうち震える。身体の下へ敷いたパジャマとパンツをびっちゃり濡らした白い精液、その青臭いにおいを嗅いだ瞬間、ユキのかぐわしい甘い香りが頭のなかを塗りつぶす。
「んあっぁ、ぁ、あ、やっ…やぁ、あ!!」
なにもかんがえられなかった。
たったいま射精したばかりのペニスを激しく擦る。あまりの快楽に、膝が、うちももがガクガクと痙攣する。ハルはいまほとんど泣いていた。きもちよすぎて泣いていたのだ。
「やっ!やぁ、ぁぁっ、あっっっっ〜〜〜!!!」
二度目のオーガズムはすぐに訪れた。
びちゃびちゃびちゃ、
潮を吹きながらイく癖があるハルは、射精でイかなかったことにショックを受けつつ、潮で盛大に濡れた服とシーツを諦め、イくことだけに集中する。だから嫌なのだ、オメガは。あたりをどれだけ汚しても、一度スイッチが入ればどうしようもなく理性がふき飛び、目の前の快楽だけを追い求めてしまう。
(うしろっ、も、ぐちゃぐちゃ…!!)
なにも出ない、縮んだペニス。それでもイきたがる本能を止められずふたつを手の中で揉みながら、びゅ、びゅ、びゅ、と潮を吹くだけになったソレを扱く。
一度大きい波が来るたびに、「あ…ぁ…あ…!!」と涙ながらに鳴き、ペニスから震える手を離す。潮が止まるとまたソレを扱き「んぅ…っ!ひうっ、ひぅ…!はっ、はっあひっ!」としゃくり上げるように泣いて、また潮を吐きだす。悪循環だ。イっていないのに、潮でイく。度重なるヒートによる悪癖であった。
後ろの穴からトクトクと流れる愛液がふとももの内側を垂れ、ヌルついたそれを手でぬぐってまたペニスを扱く。
「ひぅっ、ひぅっ…ァッ、ア、ぁ!」
(いやだ…こんな…いやらしい姿見られたら、嫌われちゃう…!)
……………………誰に?
あの、あの優しいテノールの声で詰められたら、気が狂ってしまう。いやらしいね、かわいいねって言って、おれをぐちゃぐちゃにしてほしい。
そう思ったとたん、ズクンと後ろがうずいて、 「んぁああっ」と鳴いていた。
(ぁ、あ、ぁ、だめ、もっと、きもちいこと、したい…!!)
(後ろは、ダメなのに…!!)
後ろの穴は一度も使ったことがなかった。
そこは、大切な人のために取っておきたいから。
ソコは排泄器であるしオメガなのでそこに"入れる"のは物理的には問題はないのだが、そこは頑なに守ってきていた。
でも、今日は我慢できなかった。
(ちょっとだけ…ちょっとだけなら…?)
そろそろと後ろの穴へ手を伸ばす。ぐちゅり、ネトりとした愛液が指に触れる。
『…こんなに濡らしちゃったの?いやらしいね、ハル』
頭のなかで"あいつ"が囁く。
「あッッッ、や、だ…!!!!」
見ないで、言わないで。
きれいな長い指に後ろをねぶられている、そんな想像をしてしまう自分が浅ましくて、でもすごく興奮して。
(もっとして…!!!!)
自分の手で、ぐちゅり、ぐちゅりと穴の表面を撫でる。
「ぁぁァア!…っ!」
(きもちい…!!!だめ、あたまおかしくなるっ!)
知らず知らずのうちに、腰を動かしていた。
(もっと触って…!ナカ、入れて…!!)
入れて、入れて、と泣きながらひとりで浅ましく腰を振る。愛液をたぱたぱと滴らせながら、指の腹でトン、トン、トン、とリズミカルに"奥"を刺激する。本能だった。尻の奥にある前立腺を揺らすように手を動かす。ハルはまだそこの快楽を知らなかったが、無意識に腰まで振ってしまうくらいには自我が溶けていた。
『ハル、ここ挿れてほしい?』
(いれて、お願い、いれて…!!)
相手がいると想定してスるのは初めてだった。
挿れてほしい、大きいもので貫いてほしいと泣きながら喚いてしまうオメガの性がハルを狂わせる。
(挿れ…!!)
「ァ、ァァァアアッ………!」
我慢できなかった。
中指を穴へ突き立てる。濡れそぼった穴はハルの指を難なく飲み込み、初めてソコへ異物を挿れる感覚に、狭くてキツい肉をかき分けて、つぷぷ…と何かが挿入ってくる感覚に、泣きながらヨガった。
(だめ、きもちい、きもちいいっ…!!!!)
(イく、イっちゃう、イかせて…!)
(おれをぐちゃぐちゃにして…!)
(お願い…!おねがい…!!!ナカ、いっぱいシて…!!!!)
いっぱいまで突き立てた中指で、後ろをめちゃくちゃに犯した。
ぐちゅっ♡ぐちゅっ♡
ぐちゃっ♡ぐちゃっ♡ぐちゃっ♡
聞くに耐えない、ひどい水音がする。タガが外れたいやらしいメスの音だ。
「あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡っ〜〜♡!!!!」
自分の口から聞いたことのないヨガり声が溢れて…なにもかんがえられない。きもちいい、きもちいい、もっとして、たくさんシて。
たくさん出して。
『きもちいい?』
テノールの幻聴に、きもちいい…!と泣きながら心の中で答える。
「ンアッぁ、ぁ、イ…っ〜〜っっ♡♡」
イく。イっちゃう。すごいのきちゃう。
『いいよ、ハル、たくさんイって』
「う♡ゥ♡う、あ♡あっ♡ぁ、ぁ…!いく…い、く…………っっ〜〜〜〜〜〜〜!!!♡♡♡♡っ、♡♡」
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ひとりでシたあとの虚脱感ほど酷いものはない。
むちゃくちゃイッたあとはほとんど意識を失うように眠って。
起きた時には、燃えるように煮えたぎっていた身体は鎮まっていた。やはりヒートではなかったのだ。
普通のマスターベーションにしては前後不覚になるくらい激しくしてしまったし、"相手"がいる想定をしてのオナニーは初めてで、罪悪感が半端ない。
(…嫌いなはずなのに………)
どうして、こんなに気になってしまうのか。
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