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13.冷たい態度 *

「服ぬいで」 そう言い放つユキの彫刻のような美しい顔は氷のように冷たく、ハルは急激に不安に晒される。たじろいで後退りした先はシャワーヘッドの真下だった。 ユキは怯えた表情をするハルを一瞥するとシャワーコックをひねり、壁掛のシャワーヘッドからまだ温まっていない冷水が吹き出す。冷水をまともに食らったハルは一瞬でずぶ濡れになった。 「つめたっ!おまえさぁ…!」 凍えるような冷水を頭から浴びせられたハルはユキを睨みつけたが、逆に冷ややかな視線を向けられてぎょっとした。 片腕を掴まれ、無理やり壁側を向かされる。 「服ぬいで」 もう一度言われる。感情の乗っていない言い方にハルはびくりとして怯え、震える手で濡れたトップスを脱いだ。 水を含んで重なったトップスはびちゃりと足元に落ちた。拾おうとしたハルの腕をユキが取り、壁に突いた手のひらの上からユキの手が重なり、固定される。 背面から固定され、動けない。体格も腕力も相手の方が上。力関係も。自分の意思に関係なく他者の手で裸に剥かれることがこんなに屈辱的だとは。 窮地から救ってくれたユキを信じてこんなところまで着いてきた自分も馬鹿だった。手負いのオメガがアルファに拾われて、無事で帰してもらえるわけがないじゃないか。 …信じてたのに。 顔も見えない状況で逃げ道を阻まれ、感情がぐちゃぐちゃになって処理が追いつかない。 …泣くな。声なんか出すな。 唇を噛んで耐えようとするも、ふいに身体に触れた手にびくんと反応してしまった。 「どこまで触られた?」 「なにもされてない…っ!!」 「それはうそ。おれの鼻を騙せると思わないで」 肌のうえをすべるユキの手のひらに、ぞくぞくと感じてしまう。徐々に温度を上げるシャワーの湯で身体は温かく湯気立っていくが、ユキの冷え切った態度に怯えているハルは身体の芯から凍えて手足が震えていた。 「ひどい匂いだったよ」 「発情したオメガと、興奮したアルファのひどい匂いが充満してた」 頭に銃口を突きつけられたような気がした。 「いまだってそう。シャワー浴びてるから多少マシだけど、下手したらおれもブチ切れそうだよ」 「……っ」 ごり、と下半身に固いものが押しつけられる。じょりじょりした毛深い下生えの感触もあって……欲情されてているという事実が恐ろしかった。それなのになんの感情も込められていない淡々とした声のトーンが怖くて。 …ユキが何を考えているのかわからない恐怖がハルを萎縮させる。 「汗の匂いで感情も読み取れたりするよ。緊張、恐怖、欲情、焦り、怒り……」 「それと…血の匂い」 「ここ殴られたの?」 唇の端にユキの指が触れる。チリ、とした痛みと、わずかに心配そうな色が込められたセリフに胸がぎゅっと鷲掴みにされたような気がして。 体の正面は壁に向けたまま、顔だけ後ろへ向かされる。傷の状態を確認されそうになったが傷付いた心の扉を閉ざしているハルは「触んな…!」と拒絶した。 それなのに気にしたふうもなく、泡をまとったユキの手は身体をぬるぬると撫でていく。 裸になるのは嫌だ、触られるのも嫌だ。こんなに嫌だ嫌だって言っているのにおれを無視するのはなんでだよ…! 「ナカは?」 「ひ、う…!使ってない…!!」 「ほんとに?確かめていい?」 「いやだ…っ!いや、いやだ、触んな!あ、や、やだぁ……!!」 尻のまるみをヌルヌルと撫でていた指が、割れ目へ入り込む。ついさっきまで見知らぬ男の竿を擦り付けられていたソコに指をぬちぬちと押しつけられ、ぶるぶると足が震える。

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