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14.仕打ち *
洗うために触れているのか、条件反射的に惨めに乱れていくオメガをあざけっているのか。
簡単に探り当てられた穴に、指先が押しつけられる。やだ、いやだと頭では思っているのに、火照りだした身体は自ら尻を差し出して決定的な刺激を求める。
「あ、あ、あ、うゥゥ………!」
壁に手を突き、尻を突き出して。
典型的な、媚びたメスの姿勢だ。こんなこと早く辞めなければと分かっているのに、もっと、もっとと気は狂っていく。
シャワーの湯を借りてか、濡れていくオメガの欲を借りてか。ぐぐ、と押しつけられた指は簡単にナカへ潜り込んだ。
ぬぷぷ、と挿入ってくる、成獣男性の第一関節。自分の指の太さとは違うソレが狭いアナルを押し広げて挿入ってくる。圧迫感と、背骨を駆け上がるゾクゾクとした快楽。
……ただでさえ、触れられただけで感じてしまうのに。
触られている、入れられているという事実であたまがバカになっていく。
「…ぁ、ぁ、ぁ……っはぁ……っ……」
「……キツいね」
「だから、入れられて、ッ、ないっての…!!!」
悪態を吐かなければ理性も状況もかなぐり捨ててヨガり声を上げてしまいそうだった。
「キツい…キツいね、ハルのなか………」
「ひ、ぃあ…!!!馬鹿…!!!ぁ、ぅ、、…!!!」
イイところを掠めて、付け根まで差し込まれた指がゆっくりと抜き差しされる。粘膜をこそぎ取るように肉の壁を押し上げてくるその動きに、嫌でも感じてしまう。
「んんあッ」
ぬぽん、と突然指を抜かれて変な声が出てしまう。指の形を覚えてしまったアナが寂しくて、なんで、どうしてとハルが後ろを振り返ると、ユキは今しがたアナルを蹂躙していた指の匂いをくんくんと嗅ぎ「あいつの匂いしないね」と安心したように笑った。
「っ〜〜〜〜〜、!!!!!」
アナルに中出しをされていないか、匂いで精液の有無をチェックしたのだ。まるで犬が散歩中に電柱の臭いを嗅ぐように、気楽な動作で。
身体の中で一番汚い所、一番ひとに知られたくない部分の匂いを…!!
湧き上がってきたのは羞恥。そして怒りだった。
「おまえふざけんなよ…!!!」
「?なに?」
「おれはっ…!別にすき好んであいつに襲われたわけじゃないのに…!!!!もっと心配するとか気遣うとか、そういうんじゃないのかよ!!!!おれはおまえの所有物じゃない!!!!!」
言いたいことがぐちゃぐちゃで、がんじがらめになって、なにひとつうまく伝えられない。もどかしい。
「だから洗ってるんでしょ」
「違うっ!!おまえのは、おれを……オメガを馬鹿にしてる…!!!!いまだってやってることあいつと変わんねぇじゃねえか…っっ」
「ハル、落ち着いて。気が動転してるんだよ」
「うるせえ!!うるせぇ、触んなっ!!!触んなよぉ……!!!ひとりでやる…!!」
惨めだった。
暴漢に襲われ、心を許しかけたやつからもこんな仕打ちを受け。
ハルは自分が泣いているのに気付いた。
涙は、溢れるそばからシャワーと混じり合って排水溝へ消えた。おれの記憶も、傷付いた心も、ああやって一緒に流れて消えてくれればいいのに。
「……わかった。落ち着いたら出ておいで。俺は向こうにいるから」
「ッ………悪い…出てってくれ………頼むから……………」
広いバスルームで、膝をかかえてしばらくひとりで泣いた。
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