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18.寝てるとかわいい

次に目が覚めたときは朝だった。 お互い、好き勝手に寝返りを打っていたらしい。獣型を保ったままのユキは見事なへそ天を見せてぐうぐうと寝ているし、ハルといえばキングサイズのベッドの足元、落ちるか落ちないかぎりぎりの所で辛うじてベッドに収まっていた。まるで飼い犬にベッドの中央を奪われ、居場所を失った人間が隅っこで丸まって目が覚めるように。というかこの状況、そのまんまじゃねえか。 起こさないようによじよじベッドを這って獣の隣を陣取る。濃い色の毛並みをモフりながら、もう一眠りしようかな…と大きくあくびをする。 (寝起きのモフモフは最高だぁ〜……) とくに腹の毛が柔らかくてふわふわでたまらん。羽毛みたい。夢見心地で柔らかい毛を顔でモフッていると、半分まだ夢の中にいる獣が起きて、あふ、と大きくあくびをする。口吻がざっくりと割れ、鋭い歯が上下にぎっしりと並んでいる様子にハルは目を剥いてしまう。さすがに3m超えの犬科の口はすごい迫力だ。牛ほどもありそうな頑丈で大きな頭蓋とアゴから生み出されるパワーは想像するだに恐ろしい。ヒトの頭なぞ一噛みでミカンのようにぐしゃりと潰してしまえるだろう。 一瞬恐ろしげなあくびを披露してみせたあと、柔らかいベッドで一晩寝た獣は満足げにハルの頬をべろべろと舐め、続いて前足の肉球をぺろぺろカミカミしていたかと思うと、すぅぅ………と再び寝入る。へそ天で。 (幸せそうに寝やがって…!) 慈しみを感じて心が温かくなる。 へそ天している大きな前足がピョンと胸の前で揃えられているのを見て、かわいいなあ…と握手をしてみる。起きない。 (ちょっとバカっぽいな) (…かわいい…モフモフ…) 獣型は素敵なモフモフ、人型は超絶イケメン。これ以上の逸材はないと思うが、バカっぽくて口下手・オンリーワンな世界感強めの性格は少々…いやかなり難ありだ。 でもまあ、こいつはこういう奴なんだと諦めて"友達として"付き合うくらいなら……… ……? あれ?こいつ… 勃ってんじゃねえ………?

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