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26.夢想**
夜の正門に横付けされた高級車。ハルは老執事のエスコートで後部座席に乗り込み、感嘆した。ボディからホイール、内装まで全てがエレガントだった。足元はラムズウールの豪華な柔らかさを持ったオーダーメイドのフロアマット。天井(ルーフライナー)は光ファイバーを利用しているのか、プラネタリウムのような幻想的な星空。シートはなめらかで手によく馴染むレザー素材。高級すぎる。これぞセレブカーだ。
自意識過剰かもしれないが、まさか今回の来国のために購入した車なのかと思って運転席の老執事にそれとなく訊いてみると、老執事はおっとりと笑んで「相応しい物をご用意させて頂きました」と答えた。
「はぁ…」
「この国は左車線通行なのですな、ほっほっほ…気をつけて走行致しますがなにぶん老いがきておりましてな、どうぞシートベルトはしっかりとご装着ください」
「セバスチャンいま何歳だっけ?」
「さて…ユキ様のおしめを取り替えた時はまだ若かったですがね…」
車がゆっくりと走り出す。力強くなめらかな走行。運転手の技術もあってハンドルさばきやブレーキも非常にソフトで走っていることを感じさせない、極上の乗り心地だ。
車が大学の敷地から遠ざかり、街の中心へ向かおうとしているのに気付いて、ハルは慌てた。
「今日はありがとう、助かった」
「いいよ。明日も手伝うからね」
「明日って…おまえ、国に帰らなくていいのかよ」
「別に?皇子なんて暇なもんだよ。それより俺はハルの近くにいたいし。ね、俺のところ寄っていく?一緒にディナーを取ろう」
「いや遠慮しとく、セバスチャンさん、車をおれのアパートにお願いします」
皇子をパシりのように使っておいてコーヒーたった一杯でチャラにしている気がする。だがこれ以上一緒にいたら、こっちの気がおかしくなってきそうだった。
「え?嫌だ、まだ一緒にいよう」
ハルの手を取って、必死な顔をするユキ。モフモフの耳を力なく下げた綺麗な顔面に懇願されてハルはうろたえた。
夜が更けていく。仮にユキの言う通りにホテルでディナーを取ったとして、その後はどうなる?深夜、ふたりきり、密室。ユキは「婚前交渉はできない」と言っていたが、窓の外にイルミネーションのように夜景が輝くホテルの上階でそんな条件が完璧に揃って仕舞えば、ハルのほうが先に参ってしまう。
「いや…いい。明日また頼むよ、朝10時に学校で。セバスチャンさん、車をお願いします」
「かしこまりました」
「ハルぅ……」
ユキは情けない顔でモフモフの尾をくるっと小さく丸めて膝に挟んだ。それがあまりに可哀想で、ハルもいたたまれない。
「いいこだから、な?」
クンクン鳴いている美丈夫の頭をよしよしと撫でていさめた。
「…ほら、触って、」
獣人の手を取って、自分の胸に当てた。
「わっ💦」
ハルは目を伏せて、獣人の大きな手が自分の胸に触れているのを見る。綺麗に手入れされた指先は、王族という煌びやかな身分と、アルファという絶対王者の性を象徴しているかのようだった。ロールスロイスの天井(ルーフライナー)の人口の星々を反射してきらりと光った。
オメガとアルファ。本来なら搾取される側である自分がまさか恋愛の駆け引きの真似事をするなんて、思っていなかった。
どく、どく、どく、と脈打つ心臓に触れさせると身体が切なくなって、隣に座ったユキの肩に顔を擦り付けた。
「ここ、こんなんなってる。…わかるだろ、おまえも。おれだって辛いんだ」
「う、うん…」
「我慢できるか?」
「がまん…します…」
「いい子」
お利口なわんこの額にキスを。
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アパートに帰って適当に夕食を済ませ、風呂場へ駆け込んだ。
「んあっぁ、ぁ、あ、やっ…やぁ、あ!!」
やみくもに利き手を動かす。すぐに達し、風呂場の床にパタパタと白濁をこぼした。
「ぁ、ううぅ………ぅ…!」
膝立ちのままバスタブに手をついて、絶頂の余韻をやり過ごした。頭が朦朧としている。考えるのは、ユキのことばかり。ハルのPCを隣から覗き込んでくる姿。腕組みして物珍しそうに大学の研究室のスチール本棚を眺める姿。唇に付いたコーヒーを舐めとる姿。手を繋いだ時の身長差、身体の厚み。
「はぁっ、…はぁっ…はぁっ…!」
ハルの胸に当てた手のひら、その指先。
…乳首、触ってほし…つついて、つまんで、何も考えられなくなるくらいむちゃくちゃにされたかった。
「っんあ、あ、ぁ……」
想像し、たまらずに自分の胸を弄る。固くとがった乳首をこねくりまわし、片方の手で達したばかりの陰茎を掴んだ。
「ぁふ、ふ、ふぇぇ………」
あさましく腰が震える。アナルからとめどなく溢れてくる愛液が玉を伝い、ふとももまで濡らしていた。そのぬめりを手のひらに取って玉と陰茎を揉み、無理やり勃たせようとする。
「ん、く……!」
びしゃ、と一度潮を吹く。風呂場の床をわずかに濡らす量だったが、二度、三度と立て続けに潮吹きし、あっという間に水溜りになる。
「だ、め、きもちぃ…っ!!!」
獣人のモノを深く突き入れられる夢想を思い描き、何度も達し……やがて何も出なくなった。
(……明日10時、行かなきゃな……)
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