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【婚姻編】31

ーー木漏れ日のさす森の先に、野花の咲き誇る丘がある。 丘の見える場所へ、転がるようにじゃれ合いながらやってきた獣人族の子犬たちは、その丘の上に花嫁と花婿がいるのを見つけた。 美しい刺繍の民族衣装。 たっぷりと布を使った豪華な服は、ふたりが高い身分である証だ。 丘のずっと向こうにきれいなお城が見える。ふたりはそこから来たのだろうと子犬たちは思った。 「なにしてるんだろう」 「あれはお城の王子さまかな」 「となりのお姫さまはだれ?」 「しゃーまんのおじさんがいる!」 子犬のひとりが、たっと走っていく。 「この赤い木の実、おいしいんだよ」 花嫁に、無邪気に話しかける獣人の少女。 大事そうに持っていた木イチゴを差し出すと、 花嫁は驚いたようだったが、すぐにやわらかく微笑んだ。 「くれるの?」 「うん」 「ありがとう」 「ふたりは結婚するの?」 「そうだよ」 「赤ちゃんいる?」 「…まだいないよ。でもそのうちできるかも」 「赤ちゃんってかわいいんだよ!とってもちっちゃいの!」 「ふふふ。そうだね」 くすぐったそうに笑う花嫁と、花婿。 ーー笑い合うふたりは、幸せそうに見えた。

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