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87.獣のように

ユキの指が触れると、まるで熱が皮膚の奥にまで染み込んでくるようだった。 獣だったときよりも、人間の姿のほうがずっと近くて、逃げ場がない。 息を吸うたびに、ユキの匂いが胸に落ちてくる。 喉が震える。 身体はもう、ひとつになる感覚を覚えてしまった。 獣の重さとは違う、人の姿のユキの体温が覆いかぶさるだけで、胸の奥から期待がふくらんだ。 (あ……また……抱かれる) ユキの手が、腰へ、背へ、探るように触れてくる。 そのたびに身体の奥が反応してしまう。 「……我慢してたんだよ。ほんとに、ずっと」 耳にかかる息が熱くて、甘いキスはすぐに深く溶け合うものへ変わった。 「愛してる」 その言葉が肌へ落ちるたび、ハルの呼吸は乱れていく。 ユキがハルの手を掴む。 まるで「離す気はないよ」と言うように指を絡め、そのまま引き寄せて身体の位置が自然と“迎える形”に導かれる。 「ねぇ、ハル、もう一回、ナカ、いい…?」 声は優しいのに、ユキの言葉はどうしようもなく熱を帯びていた。 鍛えられた胸筋、強い腕。 そして、硬度の衰えない怒張が触れ、ハルは息を呑んだ。 「お前、こんなに出したのに……元気すぎだろ……」 「だって、我慢できないよ」 (――ああ……また……) 吐息が耳殻を舐める。 背筋がビクンと跳ねあがり、ハルは思わず腰を引いた。だが逃げ場など与えられない。 ユキは腕を絡め、まるで“獲物を逃がす気などない”とでも言うように、強く抱き寄せた。 指先がハルの割れ目をなぞると、たらふく注がれた愛のしるしが指にからんだ。快楽に慣らされたハルの身体は、歓喜に震えーー 「あ……っ、そこ……!」 「うん、」 抱きついてくるハルを、ユキは受け止める。 指がゆっくりと深く潜り込み、余熱の残る内部を探る。 「ひっ、んぁ……! や、ユキ……っ、やだ、もっと奥……っ!」 「まだこんなに広がって……俺の形、残ってる」 遠慮を知らず、ぐちゅり、と掻き回すように奥を押し広げる指。 足りない。 もっと欲しい。 ハルは涙を浮かべながらユキにしがみつき、唇を求めた。 「ン、ンン……!!」 (今度は、おれが気持ちよくしてやる番…!) ハルは震える脚に力を込め、ユキへ跨ろうとする。 ユキの怒張に手を添えて、自ら腰を落とそうとするがーー 「ああ……ぅぅ…ン…!!」 うまく、入れられない。濡れそぼった怒張は、弾力のあるハルの尻にぷるんと弾かれ、ハルは泣きそうになる。 「っ、!…は、入らない……」 「ハル……」 「ごめん、おれ、下手だ……おまえが、してくれる…?」 その仕草に、ユキの瞳は甘く蕩けた。 指を引き抜いたユキが、熱を帯びた怒張をハルの入口に押し当てた。 さっきまで獣の形で暴れていたとは思えないほど、人間のそれは硬く鋭い。 「いくよ……」 狙いを定めると、再び怒張を埋めていった。 低い声とともに、深く沈んでくる感覚。 「あ、く……っ……ああ……!」 さっきまでとは違う。 質量ではなく、鋭い熱が奥へ奥へと突き上げ、 “人間のユキ”としての執着がじわりと伝わってくる。 「……ハルは俺の、運命だよ」 囁きは優しいのに、腰つきは野生そのものだった。 ハルの身体は震え、呼吸は乱れ、寄せては返す波のように快楽が押し寄せてくる。 「ぁぁっ、すごい…ッ♡強い…!!♡♡」 「声、可愛い…」 血管の盛り上がる猛々しいそれが、性感帯を押しつぶす度に、ハルは歓喜に震えた。 どん、どん、と重く、何度も打ち付けられーー 膣の奥で、ごり、ごり、と容赦なく子宮口を責め立てられる。その度に、ハルの脳裏に星がいくつも散る。 子宮が、こじ開けられるーー 「すごい……ハルのなか、かわいいよ……あったかい……きもちいい……」 「あっ! んっ!! ァ……!!」 甘い声で言いながらも、ユキはハルの反応など気にかけず、自分の都合のまま激しく動く。 その支離滅裂な言葉さえユキらしくて、ハルは愛しさが込み上げ、涙がにじむ。 「んっ……! ユキ……ちょっと、待って……っ!」 「ハルも嬉しいの? ぎゅってしてくれてる……」 得意げに笑むような声。 「それは……お前が……っ、激しくするからぁ……!」 「ほら、また奥で締まった。ね? やっぱりここ、好きだね……」 「ちがっ……ちが……ぁっ……!」 (声、止まらない……! 体が……勝手に……!) 「違わないよ。ハルの身体は、嘘つかないよ」 ユキは背中を撫で、逃げ道を塞ぐみたいに深く抱きしめた。 その熱に飲まれるように、ハルの呼吸がひゅっと震える。 (イイとこばっかり……!) (これ以上されたら、もう……!) 「……はぁ。ほんとに……たまらない匂いだよね……」 囁きながら、ユキはハルのうなじを覆う髪を指で払いのけた。 露わになった真新しい噛み跡――結ばれた証。その赤みに、ゆっくりと唇を寄せる。 キスされ、舐められ、そこからじんわり熱が広がるたび、ハルは目が眩むような幸福と快楽に捕まっていく。 ずちゅっ、ずちゅっ……! ずちゅっ、ずちゅっ……!! 「アアァ…!!! やぁ……!!」 (そんな……急に、激しく……!!) ずちゅっ、ずちゅっ、ずちゅっ、ずちゅっ……!! 「ユキぃ…! ぁっ♡ あっ、ァア……!」 膝が震え、後背位のままシーツにしがみつく。 頭の中で火花が散り、身体の芯まで“きもちいい”で満たされていく。 「いきそ……待っ、て……! ィ……!!」 (止まって……! もう、体力が……限界……!!!)  必死に胸筋をぺちぺち叩いてギブアップを訴える。 なのにユキは、激しく腰を打ち込みながら、ハルのフェロモンを吸い込むように夢中で―― ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ……!! (だめ……もう……!!!) 「ふ、ぁぁぁぁ………!」 びちゃびちゃ、と潮が弾ける。 萎えたあそこから吹き出した飛沫は、こぼれたそばからシーツに染みていくが―― もうほとんど出し尽くしてしまっていた。 イク=潮吹きと覚えてしまった身体は、絶頂に合わせてきゅっと力むものの、『もっと出したい』という願いに反して、落ちてくるのは数滴だけ。 それでも、ユキは本能のまま、腰を振り立てる。 「あうぅう、うぅ……!!」 ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ……!! 揺さぶられながら、ハルは長く、深い絶頂に呑まれていく。 (ずっと……イってる……) (きもち……いい……) ふわりと、意識が遠のく。 力が抜け、柔らかなシーツに体を預けたまま、 後ろから打ちつけてくる律動だけを受け入れる。 ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ……!! (あ……落ちる…………) そしてハルは、震えるような息を残して、意識を手放した。 * * * 「……こうやって抱きしめてるとさ……全部、オレのために震えてくれてるのがわかるんだ。嬉しい」  「…………?」 ふわりと、意識が浮上する。 (あれ……? おれ、寝てた……?) 耳元へ落ちる声は優しい。けれど、その奥に隠しようもなく漂う欲の温度は、すぐに理解できた。 やわらかく笑うくせに、言葉はしっかり自分本位だ。 「オレね……一回、二回じゃ足りないと思う。取り戻さないと」 「は……ぁ……っ、……!」 下半身に、ユキの長い足が重なっている。 (……?) (え……まだ入って……?) ずちゅんッ! 「あああッ……!!」 とてつもない快楽が、身体を貫いた。 ハルは目を見開く。まだ繋がっている。それどころか、シーツも下半身も、酷く濡れそぼっていた。 「ねぇ……もっと奥、ぐりぐりしてあげる?ハルが望んでるなら、何回でもするよ……」 「……ぁぁあっ……やぁ……っ!」 腰が打ちつけられ、ハルの身体が跳ねる。 ユキの言葉は誤魔化しの余地を許さなかった。 「ハル、可愛いよ。可愛い……」 優しい声なのに、瞳の奥は恋と欲で火がついたように熱い。 「ハル……?オレを見て。オレのこと感じてる顔が、一番好きだよ」 (こいつ……まさか、おれが寝てる間も……!?) 「っ……!!ばか……っ……!」  「うん。おれ、『ハルばか』だから」 「そうじゃな……!今、新しい言葉つくるなァ、ばか……!あっ……!あぁっ!」 意識の飛んでいたハルは、まだぼんやりしていて、無理強いされても抵抗できるはずがない。 ユキはさらに執拗に、奥の奥まで──逃げられない深さへ何度も打ちつけた。 (あ、やばい……!) (深すぎる……!!) ぐちゅ、ぐちゅ、と水音が響く。 先ほど流し込まれた精液がピストンで掻き出され、泡立つようにえぐい水音を立てた。 汗と精液、愛液にまみれ、ふたりは熱を分け合うように愛を交わし続ける。 それは、三日三晩に及び── 時に、獣の巨大なモノで貫かれ、どくどくと濃厚な熱を注がれ、 時に、人の姿で容赦なく奥を責め立てられ── 満たされ、揺さぶられ、また沈められ── 快楽と熱だけが、果てなく続いていく。 もはや、自分を攻め立てているのが人間の姿のユキなのか、獣の方なのか、分からない。 意識が戻ったとき、ハルの拳の中に、獣の毛が握られていたこともあった。無意識に毟ったのだろう。 昼夜もなく睡姦まがいのことをされているのだから、毛むくじゃらの相手が多少体毛を失ったところで、文句は言えない。 行為に疲れたとき、ユキは汲んできた水を口に含み、意識の飛んだハルへ与える。 胡乱ながら目に光が戻ったハルに、ユキは嬉しそうに微笑み、“ご褒美”だとばかりに、また絶え間なく快楽を浴びせ続けるのだった。

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